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たぶん現在世界唯一のミシュラン3つ星を獲得している中華料理レストラン(ほかにあったらお知らせください。)。広東料理のレストラン。アジアの50ベスト・レストランでは13位にランクされている。

香港島の中環駅や香港駅に近いフォーシーズンズ香港の4階にある。午後6時30分という早い予約時間だったため、客はほとんど入っていなかった。予約で希望した窓際の席はハーバーヴューが最高である。目の前がフェリー埠頭で、大型の豪華客船などがヴィクトリア湾を行き交うのが見える。対岸の九龍に向かうスターフェリーには次から次へと客が乗船して出港するのが見える。ドラゴン(龍)の眺めという店の名のとおり、対岸の九龍の高層ビルの夜景も美しい。特に、ザ・リッツ・カールトンホテル香港の入っている香港一の高層ビルInternational Commerce Centre (ICC・環球貿易広場)のイルミネーションは、東京スカイツリーを手掛けた日本人の照明デザイナー、戸恒浩人さんのプロデュースである。窓際のテーブルはテーブルごとに窓枠が区切られているため、個室のような独立感があり落ち着ける。

食事の前の飲み物にグラスのシャンパーニュを希望したところ、早い時間のため、抜栓しているものはなく、ワインクーラーで冷した数本のシャンパーニュを持ってきてくれた。ローランペリエの白とロゼのほか、ミレジメもあったが、お値段もかなり高そう。それにしても中華料理レストランのアペリティフにこれだけの種類のボトルを見ながら、グラスのシャンパンを選べるのは、世界唯一の3つ星中華だけのことはある。ローランペリエのロゼ・ブリュットをオーダーする。抜栓直後だが、ピノ・ノワール100%のセニエ方式によるロゼだけのことはある。爽やかな酸味にベリー系の香りがエレガントである。さすがにいいシャンパーニュを用意してくれている。

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ワインリストには超膨大なアイテムがある。ブルゴーニュ、ボルドーが多いが、アルザス、ロワール、ローヌなども結構あるし、新世界もある。
DSC01307ワインはアワビソースやオイスターソースなどのやや甘い広東系の中華料理に合わせるため、ピノ・ノワールのやや甘口、2009のヴォーヌ・ロマネかカリフォルニアが良いと思われたが、膨大なメニューの中にオ・ボン・クリマ2008を発見。先般の日本ソムリエ協会のセミナーで生産者からを話を聞いて、テイスティングしたばかりで、最近のカリフォルニア・ピノの傾向のエレガントな酸味と従来型の甘さやパワーも感じられ、エレガントな中華料理にちょうど合いそうである。

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ピノ・ノワールを飲みたいと言って、ソムリエにお薦めを聞いてみると、選んだ二つのうちに偶然にもこのワインがはいっていた。もう一つは2007のジュブレ・シャンベルタンVVであった。これも納得できる。ソムリエのレベルは相当高そうである。

メニューはコースメニューとアラカルトのうち、アラカルト中心に当店のスペシャリテSIGNATURE DISH 中心に選ぶことにする。

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まず、前菜の盛り合わせ Chef’s Signature Appetiser Selection (choose 3 or 4 varieties) 。3点盛りか4点盛りを選べるが、4点盛りにする。内容はサックリング・ピッグ(乳飲子豚のロースト)Barbecued Suckling Pigが2切れ。皮が甘くこんがりパリッと焼き上げられ、肉は脂が少なめでジューシー。繊維はしっかりしているが、柔らかい。アラカルトメニューの一皿では量が多すぎるが、もう少し食べてみたいところである。

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春巻き。これはやや普通だが、五香粉の香りがスパイシーである。くらげは厚みがあり、コリコリとした食感は日本で味わうのとほぼ同じ。魚のすり身の団子、レタス添え。ベトナム料理の生春巻きなどにつけるトウガラシ入りの甘酢につけて食べる。魚の香りが新鮮だ。

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蒸しフォワグラの鮑ソース添え Steamed duck liver flavoured with abalone sauce 鮑汁扣法國鴨。当店のスペシャリテの一つ。フォワグラがしっかりしていて存在感がある。フランス料理のソテーしたフレッシュ・フォワグラよりもソフトで、きめ細かくクリーミーだが、形が崩れることなく、固形のまま繊細な鮑のソースに絡むのが良い。最良のフレッシュ・フォワグラでないのはやむを得ないところだろうが、フランス料理よりエレガントな一品である。鮑の煮込みを食べてみたいところである。ただ、鮑添えは倍以上のお値段。甘くてコクのある鮑ソースは複雑性があり、オ・ボン・クリマとの相性は予想通り素晴らしい。椎茸が一つ添えられている。

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ウォック・フライ・プローン Wok-Fried Prawns with Organic Black Garlic and Dried Chilli。中華鍋で炒め揚げされた大きな海老にチリソースとガーリックを絡めた一品。海老が複雑に包丁を入れられた上に、中華鍋で均等に短時間に火入れされている。肉厚の海老が均等に筋肉質で弾力性があり、食感はこの世のものとは思えないほどの最高レベル。味も凝縮感と緊張感があり、集中力のある味わい。日本の柔らかくてほどほどにぷりぷり感のあるエビチリなどとは比較の対象にならない、全く別世界の料理である。豆鼓の粒も入っていてコクを出しているが、全く塩辛くない。

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薄切り日本産豚肉のテンダーロインXO醤ソース Wok-Fried Pork Loin in X.O. Chili Sauce。これはまた異なるタイプの料理。豚肉が上質のしゃぶしゃぶ肉のように、ふんわりジューシーで、あっさりとしたXO醤ソースは全くしょっぱくなく、エレガントな味わいである。少し豚肉の脂が気になるところだが、日本産の黒豚だからだろうか。ほとんど繊維を感じずにソフトで、広東料理らしく、丸くとんがったところがない料理である。

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龍景軒チャーハン Lung King Heen Lobster Fried Rice with Seafood。店の名前を冠した、オリジナルのチャーハンはロブスターを主体としたシーフードのチャーハン。ふんわりしっとりしているが、全く油っぽくない。甲殻類の香りが大きく広がり、味わいも複雑である。米粒と米粒は独立していてねっとり感はないが、ぱらぱらとバラけた食感はなく、しっとりまとまっていて、柔らかいニュアンスが漂っているチャーハンである。ポーションは一連の料理の後に2人で食べるものとしてはかなり多い。

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アーモンドクリーム卵白添えSweetened Almond Cream with Egg White。入っている透明状のものは卵だろうか、このデザートは甘くてクリーミーだがコクや味わいがほとんどなく、日本人には理解できない一品である。メニュー選択のミスかもしれないが、広東料理の甘くてとらえどころのないような拡散的な特徴を集約的に表現しているともいえる。

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最後に、小菓子もサービスされた。こちらはわかりやすい甘さや酸味と食感。お茶はポットが保温されていて、最後まで温かいものを飲むことができる。

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慇懃で丁寧なサービス。常に客の様子をそっと伺い、何かがあれば即座に対応できるようにしている。ワインもグラスがあけば、当然のように直ちにサービスしてくれる。

連れが左利きだと気付くと、箸置きまで置き換えてくれる心遣いは、今まで一度もなかったとのことで、世界的にみても最高水準のサービスといえよう。 

窓際席でヴィクトリア湾と高層ビル街の夜景を見ながらの食事は、雰囲気は最高で、リラックスできる。料理に関する限り、すべてが最高レベルとは言えず、最高レベルのものとやや普通のものがあるのは事実だが、最高水準のサービスレベルとワイン、快適性、雰囲気などが料理の評価にもプラスに働くのは事実で、料理に限定する評価ではあるが、ミシュラン3つ星は適当と考えられる。

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