昨晩は池袋のオザミ・サンカントヌフで開催されたブルゴーニュの
ブルゴーニュの自然派の代表、フィリップ・パカレ氏の造るワインは、自然酵母の使用とその働きを阻害するSO2を醸造中一切使用しないところに特徴があります。全房発酵を行い、自然な抽出によるぶどうが本来持っているピュアな味わいをベースに、多様な酵母の働きによりオーケストラの楽器のようにぶどうの持っている多様な要素を引き出して、その複雑なハーモニーを感じさせるワインを造り出しているとのことでした。
アペリティフの後の2008年のキュヴェ・オザミは、オザミの特注品でマルセル・ラピエールとの共同作品。ガメイ持っているポテンシャルを最大限に引き出した複雑性のあるエレガントな逸品です。料理は吉田豚のフラオマージュ・テートです。
パカレのワインは、全般に薄い色合いですが、2010年のジュブレ・シャンベルタンは特に淡い色合いで、優しくエレガントでありながら味わいは複雑です。料理は鹿児島産若しゃもの温かいガランティーヌ カシスのソースでした。
2011年のシャブリ・プルミエ・クリュ・ボーロワは石灰岩の持つミネラル感、酸味とリッチな味わいが良く調和したワインで、シャブリとしてはかなりふくよかでバランスの良いワインです。唯一の白ワインには唯一の魚料理「長崎産小鯛のポワレ 華やかなブールブランソース」を。
2010年のポマール・プルミエクリュ・レ・ザルヴレはフランボワーズやストローベリーなどの熟した赤系果実の熟成した香りに、全房発酵による果梗の織りなす複雑な香りが加わっています。ポマール独特の鉄とか力強さというよりはヴォルネー的な繊細さとミネラル感に複雑な旨味が加わった味わいでした。
2008年のシャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュは石灰土壌の特徴が顕著で、しっかりした酸とミネラル感、ストローベリーなどのチャーミングな香りが加わり、深い味わいでした。モレ・サンドニ的なしっかりとした味わいが感じられました。
これらの赤ワインを合わせたこの日のメインは「北海道産仔牛のロースト モリーユとキノコのソース」。
最後の2011ヴァン・ド・プリムールはガメイですが、果実味が濃厚で、凝縮感がありました。ややブレタノマイセスが感じられるのは野生酵母に由来するのでしょう。デザートは「ピスタチオのマカロン アングレーズソース」でした。
フルップ・パカレのワインは日本料理の出汁の凝縮された素材を生かした料理に共通したところがあり、ベースの繊細でエレガントなワインに、自然酵母とその活動を最大限にする醸造手法により、ぶどうの多様な複雑性をわかりやすく引き出しているところに特徴があるようです。
この日の料理は、このようなフィルップ・パカレ氏のそれぞれのワインに合わせるため、すべてソースに工夫が施され、力の入ったもので満足しました。
フィリップ・パカレ氏夫妻はすべてのテーブルを廻り、客に気さくに話しかけ、記念写真にも応じるなど、日本滞在の最終日の夜にも関わらず、疲れたところを見せずにフレンドリーに振舞っておられ、温かい人柄を感じました。