5月のアカデミー・デュ・ヴァン藤巻暁先生のencepageのクラスのテーマはIn Pursuit of Balanceイン・パースート・オブ・バランス(IPOB)的カリフォルニア ピノ・ノワール。このIn Pursuit of Balanceは2011年に設立された、ピノ・ノワールとシャルドネのアルコール度数が低く(現在は必ずしも低くないものも含まれる)、バランスの良いカリフォルニアワインを追求するグループです。三木香奈先生のピノ・チャレンジ・イン・カリフォルニアのクラスでも紹介されていました。参加希望ワイナリーは審査員の完全ブラインド・テイスティングによる審査を受け、「バランスがあるがどうか」により選定されます。今回は、このグループに参加している生産者のピノ・ノワール6種を、2009年同一ヴィンテージでテイスティングしました。
予想以上にネガティブなコメントが続出。除梗していないことによる苦みや青臭さ、人工的な香りや味わいなど。自然派の作り手によくある味わいのはずですが・・・。
多くのピノ・ノワールファンは、ブルゴーニュのピノ・ノワールをワインの評価の基準の中心において、他を比較することに慣れているということによるのでしょうか。個人的にはカリフォルニアのピノ・ノワールを座標軸の中心に置くとブルゴーニュのピノは一般に酸味が強く、ヴィンテージが若いものはタンニンが強くて、硬くて飲みにくいものが多いように思われます。特に、中華料理や日本料理などのような砂糖を使う料理や出汁の旨味を強調する料理には合わせにくいと思われます。
異文化に触れたときの拒絶反応のようなものがあると思われます。これはカリフォルニアにおいても同様で、従来のボリューム感のある、アルコール度数の高いワインに慣れた人々には違和感があると思われます。
しかし、結局、私がブラインドで評価したのは、次の2種でした。まず、カレラが含まれているということでしたので、探してみました。カレラに強く現れる、除梗していないことによるグリーンノートと石灰土壌独特の垂直方向の酸の伸びが感じられる3番のワイン、実際、カレラ・リードでした。衛星で探索したといわれる石灰土壌(都市伝説)だけのことはあります。
一方、ブルゴーニュのピノのようなタバコや紅茶熟したプラムのニュアンスが繊細に感じられるオー・ボン・クリマでした。IPOBに関係なく昔からブランドとして確立していた⒉種が、バランスを云々する以前にやはり優れているのではないかと思います。
昔からバランスが取れていて評価の高いブランドの確立したワイン、このようなワインを目指しているということなのでしょうか。そうであれば、これらのワインがネガティブの評価であるという人は、カリフォルニアのピノ・ノワール全体に対する評価が低いのかもしれません。
特に、最もネガティブな意見が多かったのが、6番目のニーリーneely(verner)、アッパー・ピクニック(Upper Picnic)。セントラル・コーストのサンタクルーズ・マウンテン。これは酸味が少なく、赤系果実のジャムのような果実味が強く、甘味も感じられ、スパイシーで複雑な味わい、ストラクチュアもしっかりしていました。やや従来のカリフォルニアに近い豊かな果実味に、バランスをとるために必要な、ドライハーブなどの複雑性が加わった印象です。これを拒否するということは、従来型のカリフォルニアのピノに対する拒絶感があったものと思われます。
このワインと対照的な味わい、一番冷涼な味わいのフレッシュでピュアな透明感のあるシルキーな1番のワイン、COBBジョイ・ロード・ヴィンヤード・ソノマ・コーストの評価が高かったことからもうなずけます。ただ、この日は蒸し暑く、二日酔いの人が多かったという事情も影響したのかもしれません。
2番目のワイン、native9はサンタバーバラ・カウンティのサンタマリア・ヴァレー。カレラと同様に全房発酵によるグリーンノートも感じられ、フローラルな香りです。アタックは強めで酸味も強くミネラル感がありますが、カレラのような上の方向への酸の伸びが感じられないのは土壌違いのでしょう。
4番目のPEAYはソノマ・カウンティのソノマ・コースト産。赤系果実のジャムの香りで、やや閉じた印象がありました。アタックは中程度で、COBBよりも果実味があり、やや軽く柔らかい味わいです。
In Pursuit of Balanceの動きは、今後も注目していく必要がありそうです。
アフタースクールの青山essenceでのクラス会は、IPOBワイナリーを含む面白いワインが揃っていました。