ビアリッツはフランス領バスクにあるフランス大西洋岸最大のリゾート地です。日本では地中海側のニースなどに比べて知名度は低く、「地球の歩き方」には1ページの記載があるだけですが、19世紀以来、この街は多くのヨーロッパ各国の王侯貴族が保養に訪れた地で、ナポレオン3世がウージェニ妃のため建てた別荘を改装した豪華ホテル「オテル・デゥ・パレ」もあります。街の近くにビアリッツ空港(正式にはビアリッツ・アングレ・バイヨンヌ空港Aeroport de Biarritz Anglet Bayonne)があり、パリのオルリー空港(1時間20分)、シャルル・ドゴール空港(1時間40分)、リヨンのサンテグジュペリ空港(1時間20分)、ロンドンのスタンテッド空港(1時間弱)から毎日直行便があります。ビーチに近い市街まではタクシーで10分程度度と大変便利な空港です。この空港へは、日本からはシャルル・ドゴール空港からの乗り継ぎが最も便利でしょう。このような観光地へのアクセスの良さは、残念ながら日本の多くの観光地にはありません。
ビアリッツはエリア最大のリゾート地で、レベルの高いホテルもありますが、今回、フランス領バスクでの宿泊先はスペイン寄りのサン・ジャン・ド・リュズのリゾートホテル「グラン・オテル・ロレアマールGrand Hotel Loreamar」でした。ビアリッツのホテルも魅力的でしたが、駅から近いのと、オーシャンビューのレストランや部屋が良さそうだったのでこちらを選びました。
ビアリッツの中心市街地は海岸近くに広がっていますが、SNCFの駅や空港は内陸側にあって、今回の宿泊地のサン・ジャン・ド・リュズの街から向かう場合は、バスや列車をビアリッツ駅で一旦降りて、中心市街地へ向かうバスに乗り換えることになります。この地域の中心都市バイヨンヌとは、間にあるアングレットの街をはさんで市街地が一体化しているため、バスが中心市街地を結んでいます。
サン・ジャン・ド・リュズからビアリッツの中心までは8月まで直行のバス便があったのですが、9月からはビアリッツ駅と空港を経由してバイヨンヌに向かうバスに一本化されてしまったので、ビアリッツの駅にSNCFの列車かバスで行って、バスに乗り換えて中心部に行かなければなりません。
ビアリッツの人口は3万人余り。観光客が多数訪れるリゾート都市の性格があるためか、もっと規模の大きな街に思えます。
このような街ですが、この街にはミシュラン星付きレストランも3軒あります。今回はミシュランだけでなく、ゴー・ミヨでも評判の良い、ラトリエ L`Atlierに行きました。銀座三越にあるLes Rosiers Eguzkilore (レ ロジェ エギュスキロール)の本店に当たるLes Rosiersレ・ロジェはこの街にあるので行きたいと思ったのですが、ネットの評判やゴー・ミヨの記事でこちらに決定しました。
ビアリッツの駅からバスに乗って、ビアリッツの中心部を少し過ぎたところにある停留所で降ります。車内放送や表示による案内はなく、事前に路線図をダウンロードしておく必要があります。
ミシュラン一つ星レストランで、ゴー・ミヨの評価は帽子3つでこちらの方の評価が高いのです。たぶん、フランス領バスクではこの店の料理が最高レベルでしょう。
この日は日曜日のため、ランチの日替わりメニューFormules Déjeunerはなく、アラカルトからアントレ、メイン、デザート又はチーズを3品選ぶコースにしました。これが結果的には大成功でした。
アミューズのフォワグラのクレーム・ブリュレは衝撃的な美味しさ。絶妙なキャラメリゼによる、パリッと香ばしく焼きあげられた表面と、ねっとりクリーミーで濃厚なカスタードは、それだけでもデザートとして最高レベルだが、これに加えて、凝縮した味わいのフォワグラが参加、極めて完成度の高いアミューズとなってしまいました。スイーツの本場、フランス・バスクならではの一品です。
前菜のラングスティンのロティ、グリンピースのアイス、ミント、ローズ・グレープフルーツのムース。Langoustines Rôties, Glace Petits Pois – Menthe, Mousse Pamplemousse Rose。料理自体はシンプルだが、甲殻類独特の香りが強烈に広がり、微妙に焦げ目の入った絶妙な火入れ加減で食感が最高、塩とスパイスが素材の味わいをさらに引き立てる。海老系料理では世界的に最高レベルでしょう。
イワシのマリネ、ソース・フュメFilets de Sardines Marinés, Sauce Fumée,パクチョイのへーゼルナッツ・オイル、冷たい野菜Pack-Choï à l’Huile de Noisettes, Légumes Rafraîchissants。スペインを含むバスク料理の定番のイワシですが、脂がのって光り輝いていて柔らかくジューシーで、程よい酸味が爽やか。スパイス使いも最高です。
ビーフのフィレ、アーティ・チョークの芯のバター・ムスー添え。ポワレとマリネの2種の調理方法で。Filet de Bœuf En Deux Façons, Poêlé et Mariné、Cœurs d’Artichauts Au Beurre Mousseux。これは調理レベルの高さをあえて誇示したメニュー。個人的にはマリネというか、タルタルのような牛ヒレの調理技術のレベルの高さを評価します。もちろんポワレも最高です。
ワインは地元産のイルレギ・ルージュ アレチュア。果実味が豊かでフレッシュなワインです。
メルルーサのキャラメリゼ、生姜のソース。カリフラワーのムースとコリアンダー風味のキャベツ。Dos de Merlu de Ligne Caramélisé au Gingembre, Mousseline de Choux Fleur
et Julienne de Choux Blanc à la Coriandre, Jus d’Agrumes Réduit.
これは、まあ普通のレベルでしょう。
ガナッシュ・ショコラ、ミルク・チョコレートのソースかけ、トンガ豆、フランボワーズのソルベ。Moelleux Chocolat Guanaja, Sauce Chocolat au Lait et Fève de Tonka, Sorbet Framboise.。あとから熱々のチョコレート・ソースをかけてくれたデザート。これはうまいです。
緑レモンのアイスクリームのパフェ、砕いたシリアルの粉、棒ビスケット、ブルーベリーのゼリー。Parfait Glacé au Citron Vert, Poudre de Crumble Aux Céréales,
Bâtonnets de Spéculoos, Gelée Myrtille.。エレガントなデザート。はっきり言って、この店ではデザートを必ず注文すべきということです。バスクのレストランはデザートが違います。
小菓子、マンゴー・ムース。おなかの調整をしながら、ここまでたどり着いてください。合せたのは、ハーブティでした。
この店、日本人で行った人は少ないようですが、かなりお薦めです。一つ星以上の実力だと思います。サービスは良くないけれど、料理に期待してください。
今回の旅行でも、スペインのサン・セバスチャンの三つ星レストラン、アルサックArzakの次に美味しかったのは、実はここです。伺った日曜日のランチタイムは満席の様子で、事前に予約しておいたのでテーブルは何とか確保できました。
サービスを担当するマダムは忙しそうで、少しそっけない感じ。常連と思われる客には客には親しそうでしたが。
テーブルの間隔もけっしてゆったりしているとはいえない印象でしたが、これらのことは料理の内容ですべて忘れ去ってしまうほどの料理のレベルの高さです。たぶんフランス領バスク地方では最高ではないでしょうか。この店、日本人で行った人は少ないようですが、かなりお薦めです。一つ星以上の実力だと思います。サービスは良くないけれど、料理に期待してください。