ラクレリエールは、素晴らしいレストランが集結する街、白金3丁目にあるフレンチレストランです。古川の南側のこの辺りは住工混在の町だったのですが、白金高輪に南北線の駅ができてから高層マンションが立ち並び、高台に広がる白金の高級な住宅地も近いことから、最近、ミシュランの星を獲得するような傑出したレストランが続々オープンしています。
その一つがこのラクレリエールです。2016年4月に北海道北見市留辺蘂出身柴田秀之シェフは、恵比寿のレストランモナリザの料理長を経てこちらでオーナーシェフとしてオープンされました。
ダイニングルームはシンプルで落ち着いた空間です。ビルカールサルモンのロゼシャンパーニュで乾杯の後、シェフ自らこの日のお料理の食材を見せてくれました。羊、ヒグマ(びっくり!)、鮎、トウモトコシ、アボガド、アスパラなど北海道を中心に全国各地、世界各地の食材に期待が膨らみます。
アミューズは一見チョコレートケーキのオペラのような一口サイズのもの。ブーダンノワールやフォワグラが層状に重ねられ、口の中でとろけるようなケーキの食感の魅力的な一品でした。ビルカールサルモンのロゼからほのかなタンニンも感じられ、マリアージュも楽しめました。
2皿目はカクテルグラスに入った、こちらも層状のトウモロコシのスープ、一番上は牛乳。トウモロコシの香りが豊潤で、ひげのジュレなど複雑に絡み合い、上にのせられた爽やかなオリーブ油のグリーンノートによる味変を楽しむことができました。トウモロコシの魅力的な世界が広がりました。
3皿目は旬の愛知県産の鮎。苦みのある内臓も余すことなく使っています。部位ごとに食感が異なりますが、鮎のヒレのカリカリ、クリスピーな食感、身のジューシーな味わいが楽しめました。クレソンのソースやレモングラスの泡の清涼感、下に敷かれた米には鮎とのマリアージュで旨味が滲みています。皿の隅に添えられた竹塩の青い香りも鮎に良く合います。肝の入った丸いコロッケ風の揚げ物も美味でした。
ヒグマのコンソメ。驚きの野生食材ですが、素晴らしくエレガントで、熊の旨味が凝縮されていて、濃厚で今まで味わったことのないコンソメです。熊肉は野生の筋肉が少し感じられますが、想像とは異なり、かなりやわらかです。
鮑、こちらも肝も多用した味わいの深い一品。アスペルジュ・ソバージュとオカヒジキの相性も良いです。肝のソースも深く濃い味わいで絶品。このタイミングでサーブされたバゲットに絡めてワインに合わせます。
あわせていただいたワインはミシェルクトーのムルソーの最新ヴィンテージ2020。ミシェルクトーはシャサーニュの生産者ミシェルニーロンの義理の息子で、ニーロンも実質彼が作っているそうです。繊細でエレガント、やや還元的で柑橘やブリオッシュの香りなど村名格ながら複雑なムルソーです。
この日のメインは羊のロースト。羊はラムとマトンの中間、18か月に生育した羊肉、ボゲットを使った珍しい料理です。味わいはラムよりも濃厚で、味わいは深いですが、羊独特の香りはやや少ないです。食感も弾力のある程よい歯ごたえの肉質で、甘みのあるアスパラガスと一緒に楽しめました。
肉に合わせるワインはフォジェールのドメーヌ・レオン・バラル、ム-ルヴェードル100%のワインですが、野生酵母を使った酸味が心地よく、フレッシュでエレガントなワインです。ラングドックのワインのイメージが変わります。特別にグラスワインとして抜栓していただいたとのことでした。インポーターはラシーヌさんです。
デザートの前に今回は2人の誕生日と結婚記念日を兼ねた3つの記念日のお祝い会ということを事前に告げていたので、お店の方からプレートで祝っていただきました。ありがとうございました。
デザートのメインは、季節の果物、イチジクをペースト状に使ったクレームブリュレのように香ばしく焼きあげたクレープ。原形のイチジクも添えられています。ヤギのチーズのアイスクリームはきめ細かくクリーミーでコクがありました。
ミニャルディーズはカヌレがねっとりとサクサクで満足のいくものでした。ハーブティーはこれもレモングラスがはいった爽やかなものです。
コースはディナーとしては短い8皿のMenu Lumière― 光 ―を選びましたが、それぞれの料理がかなり綿密に作り込まれていて、充実した満足度の高いディナーとなりました。2か月に1回メニューが変わるとのことで、十分に時間をかけて設計されていることが伺われます。