久しぶりに訪れた美瑛町。今回の目的は新しい誕生した食の拠点「美瑛料理塾」を訪れることである。
4月に函館で開催された世界料理学会で斎藤壽氏から報告があったが、料理王国などの編集に携わり、2008年の洞爺湖サミットの料理をサポートするなど、日本の料理界を牽引されてきたされた斎藤氏のライフワークである。
美瑛料理塾は2014年開校した全寮制の料理研修施設である。美瑛町の8年前に廃校となった北瑛小学校の跡地、「北瑛小麦の丘」に立地している。
この塾ではフランス料理をはじめとする世界各国の料理の調理技術や調理科学だけでなく、農作業の研修や牛や豚の世話、美瑛産の小麦を石臼で挽いて石窯でパンを焼くなど、様々な経験を通して料理人としての感性を磨くことを目指している。2年間、故郷を離れ宿泊棟に泊りながらの研修である。
この塾には研修の場となるレストランBi.Bleとパン工房、宿泊施設が併設されていて、一般来訪者が 利用できる。
今回は事前に予約していたレストランBi.Bleで昼食をいただいた。
ランチのメニューはパンの名前の付いたコースメニューが3種類、真ん中のcroissantをオーダーする。
3つのコース共通の最初の皿は「丘のプラトー」という5種の料理の盛り合わせ。
この日は、ラタトゥイユ、お肉とレバーのパテ、鰊のスモーク、お野菜のピクルス、サラダ菜の5種でした。
それぞれがかなりの量。野菜が甘く旨みがある。
パンは布に包まれて熱々を出してくれた。外がカリッとし香ばしく、中がふわっと柔らかく美味しい。美瑛産の小麦を石窯で焼いただけのことはある。量は多いので美味しいからといって全部食べない方が無難だ。残したパンは、あとで包んで持ち帰らせてくれる。
ワインはあったが、車なので、ブドウジュースを。グリューナ・フェルトリーナのジュースをいただく。やや甘さが感じられる。
帆立をフキノトウで包んだフリット。ほんのり苦味が効いて旨い。
人参のロースト。焼く前に食材を見せてくれる。
かなり立派な人参、量が多そうで少し心配になる。まさに素材を生かした料理。甘いのでかなりボリューム感がある。
美瑛産豚すね肉の煮込み。白インゲン豆と煮こんだ南フランスの郷土料理、カスレ風の料理である。ここでも取り分ける前の肉全体を見せてくれた。味は良いのだが量が多いため、これもお腹にたまる。
野菜の素材を生かした料理は同じ美瑛にあるアスぺルジュと共通しているが、ここではアスパラは出ない。
前夜にフランス料理を食べたこともあるだろうが、メニューの前半に糖質が多く、ポーションが大きいため、最後の方で満腹感がかなり強く感じられる。コースメニューの全体構成をもう少し配慮すべきであろう。
料理は繊細さや美しさはなく、自然の味わいを生かしたスローフード的料理である。
このレストランはロケーションが素晴らしい。窓際の席からは美瑛らしい小麦の丘のうねった畑の向こうに、十勝岳が残雪を抱いて広がっていた。
美瑛料理塾で学ぶ料理人たちもこのような素晴らしい環境のもとで生活しながら、2年間ゆったりと様々な実習や勉強ができることは良い人生経験となるであろう。
一度宿泊してワインを飲みながら夕食を味わいたいものである。