ゴールデン・ウィークに一年ぶりに訪れた札幌市、新しい食とまちづくりの動きが注目される。
新しい札幌の新名所が赤れんがテラス(Akarenga TERRACE)」だ。三井不動産株式会社と日本郵便株式会社による共同開発のオフィス・商業からなる複合施設「札幌三井JPビルディング」内の商業施設部分である。全27店舗のうち三井不動産のまちづくりのレベルの高さが注目されるのが食に関するテナントである。 新業態や札幌初の店舗が多い。
http://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2014/0526/
まず、1階。かつて、北三条通として一般道路であった北海道庁赤レンガ庁舎に至る部分が「札幌市北3条広場」として歩行者専用の広場空間になった。
ここにオープンエアのテラスがカフェとして開放されている。今年の4月10日から、オープンテラス席が設置されたもので、ビルの中にテナントとして入っているカジュアルフレンチのP’tit sale’とカフェ・レストランのPeche Grandがオープンカフェとして営業を開始している。公共の広場のためカフェ席は一般にも開放されていて、まさに赤レンガテラスである。ヨーロッパの都市ではよく見かかる光景だが、日本ではほとんど見かけない。こちらのカフェ席も広場オープンから10か月後に設置されたのだが、いろいろと事情があったのだろうか。
隣の少し前に建設された日本生命札幌ビル(下の写真左側のビル)は1階が家具店だが、、オープンテラスにはなっていない。札幌市北3条広場は札幌三井JPビルディングの建設事業者が公共貢献の一環として整備したとのことだが、いずれこちらもオープンテラスとして開放するとよいだろう。
特色あるテナントとして2つ取り上げる。一つは鶴雅グループのビュッフェレストラン「鶴雅ビュッフェ ダイニング札幌」である。鶴雅グループは阿寒の鶴雅本店を中心に道内各地にホテルを展開中である。特に、経営不振になったホテルを買い受けて、リノベーションしたホテルが人気で、地域経済に大きく貢献している。
鶴雅グループのホテルで人気なのが、ワインに合わせたレベルの高い食事である。特にビュッフェは従来の温泉旅館のバイキングとは全く異なり、ワインに合わせた北海度産の食材による質の高い前菜、タパスなどが自由に食べられる。ワインバー的感覚のビュッフェである。ワインの品ぞろえも素晴らしく、最近はソムリエが専属で配置されているため、ワインのサービスレベルも高くなってきている。(数年前のオープン当初とは雲泥の差!)
このビュッフェは従来リゾートや観光地にある鶴雅系のホテルに行かなければ味わうことがデッキなかったが、ついに札幌でも味わうことが可能になった。昨年秋開業ですでに情報が広がっているためか、ランチタイムは長蛇の列。2000円台は安いが、夜は刺身などもあり4000円台で、道産ワインやフランスワインを数人で数本頼んでワインバーやバルのように楽しみたい店である。
http://www.tsuruga-buffet.com/
もう一つ注目されるのがフードコートのバルテラスである。夜にはアルコールが出る。シンガポールやマレーシアにある屋台村、ホーカーズでは夜昼関係なくアルコールが出るし、デパートやショッピングセンターのフードコートも屋台村と境界がなく、様々な国々の料理がビールやワインなどともに楽しむことができる。日本では今までありそうでなったが、ビルにあるフードコートをバル的に楽しむことができるのは画期的である。ただ、味噌ラーメンのけやきの新業態「BISTRO JAPONAIS けやき」以外の店舗構成はバルと名乗りながらイタリア料理やスペイン料理の店がないなど、今ひとつ面白くない。どこかで、本格的なものがあったらいいと思う。
5階の眺望ギャラリーもぜひ訪れたいところである。道庁の庭や赤レンガ庁舎などの優れた景観を多くの市民や観光客に自由に訪れ楽しんでもらおうと、ビル建設者により企画されたプロジェクトである。
このスペースは眺望だけでなく、「テラス計画」と名付けられ、アーティスト、デザイナー、学生、ビジネスパーソンの交流スペース、生活・芸術文化の計画、提案が行われる『創造の場』となることが期待されている。運営は札幌駅前通まちづくり株式会社が行っている、
もう一つ、すし店がこのビルにあり、この日のランチはそこでとることにした。鮨棗(すしなつめ)という店、札幌在住のワイン・グルメ界の友人、Aさんにランチタイムに予約なしで入れる店として紹介してもらった店の一つ。薄野に本店がある。
予約なしで入れる店だが、少し早かったので1時間後に予約を入れる。この寿司店、従来の寿司店にない大きな窓から自然光が入り開放的な雰囲気である。日本の本格的な寿司店でこのようが明るい店は少ない。ミシュラン三ツ星の寿司店が地下にあったりする。
芽生え始めたイチョウ並木の新緑もまぶしい。寿司はセットメニューが中心で一番高い3000円の棗を注文。
シャンパーニュも数種類あったが、ランチでもありCAVAを注文する。店のロゴ入りオリジナルシャンパングラスと力が入っている。シャルドネが一部の魚に合わないシャンパーニュよりもCAVAのほうが一般には寿司に合うような気がする。
小ぶりの寿司は、江戸前の仕事はしておらず、ネタ的にも普通であった。タラバ蟹やアワビ、ウニの高級ネタも今一つ。
これに対して、お好みで注文した槍烏賊、ツブ貝、ホッキ貝、〆サバ、カニみそは絶品であった。ツブはアワビを上まわるコリコリした食感と磯の香、〆鯖も新鮮でシャリは小さく良い仕事をしている。ほぐした蟹肉に乗る蟹味噌の軍艦巻きも見事だ(素晴らしい香りに写真は忘れてしまった)。
この店は、セットはやめて最初からお好みにした方が良いかも知れない。セットメニューのネタはあらかじめ大量に仕込んでいるためか、鮮度が落ちるようだ。店長との会話も楽しかった。いずれにせよ、オフィスビルのレストラン街にテナントので入っている寿司店としては、東京では考えられないレベルの高さであり、札幌の食のレベルの高さがうかがえる。
食を中心とした新業態を含むテナントの食やワインに関するセンスの良さ、食自体のレベルの高さ、広場としてのオープンテラスや交流ゾーンとしての眺望ギャラリーのように快適な空間とコミュニティ機能を持ったスペース配置、これらはこれまでの日本の商業施設にない来街者を強く意識した空間デザインであり、テナントリーシングが一体となったプロジェクトマネージメント質の高さが感じられる。
あわせて、随所に札幌らしさが感じられた。ららぽーとや日本橋地区の開発などの実績のある、三井不動産のまちづくりに関する蓄積とセンスの良さが感じられる赤れんがテラスであった。