シエナのホテル待ち合わせた運転手は、約束の1時30分定時に現れ、モンテプルチャーノに向かう。1時間ちょっとのかなり長いドライブ。途中、雨が降ってきた。ピエモンテでもそうだったが、ワイナリーに行くと天候が悪くなるのはなぜだろうか。
Avignonesiのワイナリー
日本に住んでいたこともあるというパオラさんによる日本語の説明でワイナリーツアーを楽しみました。雨が降っているため、ブドウ畑のツアーは中止し、ワイナリーを案内いただきました。
アヴィニョネージは、モンテプルチアーノとコルトーナの2つの村に200ヘクタールのブドウ畑を所有しているとのこと、すべての畑で化学的な除草剤、殺虫剤、肥料を使わない有機農法やビオ・ディナミ栽培を行っている。土壌に合わせてモンテプルチアーノの8つの畑ではサンジョヴェーゼを、コルトーナの2つの畑ではメルロー、カベルネ・ソーヴィニオン、シャルドネを栽培しているとのこと。
まずはヴィンサント用のブドウを陰干ししている部屋へ。ブドウの甘い香りでいっぱい。このワイナリーでは珍しい黒ブドウによるヴィンサントも醸造しているとのこと。白のヴィンサントはマルヴァージアとトレッビアーノによってつくられている。今年収穫され、20%以下に丁寧に選別されたブドウが陰干しされているという貴重な光景を見ることができたことは、今回のツアーのまさに「収穫」であった。
【ヴィンサント用の白ブドウ】【ヴィンサント用の黒ブドウ】スロヴェニアン・オークの巨大な熟成用の樽やフレンチオークのバリック、ヴィンサントの熟成用の小さい樽などを見る。古い圧搾機やオリーブオイルを貯蔵している甕など普段見慣れていないものを見ることができた。
【スロヴェニアン・オークの巨大な樽】
テイスティングではAvignonesi Grifi 2011 フレッシュな赤系果実の香りのする飲みやすいワイン。
Vino Nobile di Montepulciano Grandi Annate DOCG 2007 15%のカベルネ・ソーヴィニオンが加わった、赤系果実にスパイシーさが加わった、バランスの良いクラシックタイプ。フレンチオークの新樽で熟成されている。
50&50 Toscana IGT 2006はMontepulcianoのAvignonesiによるメルローとガイオーレ・イン・キアンティGaiole in ChiantiのCapannelleによるサンジョヴェーゼが50%+50%ブレンドされたスパーパートスカン。ストラクチャーしっかりしたきめ細かく柔らかい味わいの長期熟成タイプのワインである。偶数年はAvignonesi で醸造されているそうで、こちらがおすすめとのこと。3分の1がフレンチオークの新樽、3分の2が使用した樽を使っている。
Occhio di Pernice Vin Santo di Montepulciano DOC1999を有料で試飲。甘い香りが広がる、極めて余韻の長い凝縮感のある甘口ワイン。
4本ワインを購入したあと、ビオ・ディナミに使う牛糞を詰める牛の角などを見た。パオロさんン、最後に、今夜、時間ができたので、婚約者のフランチェスコ君と一緒に食事ができるようになったとこのこと。仕事の関係で難しいとの連絡を受けていたので、あきらめていました。それでは夕食でまた、とワイナリーを出発しました。
この日の宿泊先はモンテプルチャーノの街から歩いて10分程度のAlbergo Il Rondò (アルベルゴ イル ロンド)というホテル。家族経営の小さな宿で、本館から一旦出たところに入り口のある離れのような部屋だ。トスカーナの農家の部屋のようなかわいらしい部屋である。
モンテプルチャーノ
モンテプルチャーノの街はシエナをはじめとする、他のこのあたりの街と同じように丘の上にあり、城壁で囲まれている。ホテルは街の城壁の外の斜面の上にあるため、街には坂道を登って行かなければならない。ホテルのスタッフが町への通路を地図上で教えてくれた。途中に坂の上に公園、「ポッジョファンティ庭園」があるが、公園に行くための地下通路があり、途中のエレベーターを使って登っていくということであった。ただ、エレベーターは故障しているのか、動かず、階段を上って行った。かなりの階段である。深夜はこの通路は閉鎖されているので、迂回しなければならないとのこと。公園を抜けると駐車場があり、観光案内所や教会がある。外部からの車をここに停めて街に入る。
グラッチャノ・ネル・コルソ通り、ここは中世から変わらない街並みである。
ピチというパスタ、カラフルな陶器の絵皿などの土産物、フリーテイスティングができるENOTECAやワインバーなどの特産のワイン関係の店、特産のペコリーノチーズを売る店など、店が並び、観光客でにぎわっていた。
突き当りの通りを右に曲がって、夕食を予約したLe Logge del Vignolaに人数変更を話しに行くと、ドアが閉まっていた。
反対方向に中世の石畳の道ヴォルタイア・ネル・コルソ通りを進む。
霧の立ち込めるなか、途中右方向に上って一番高いあたりが、モンテプルチャーノの町の中心グランデ広場である。ここには大聖堂、市庁舎、コントゥッチ宮などの歴史的建造物がある。
コントゥッチ宮の中にはワインセラー、カンティネ・コントゥッチがあり見学できた。
この日はワインとフードのテイスティンイベント「ノビーレとともに木曜日」、開催されていて、いい匂いが漂っていた。夕食を予約したLe Logge del Vignolaもレシピで協力しているようである。
いったんホテルに戻って少し休んだ後レストランへ。2人はもうやってきていた。レストランは満席で2人の追加は難しいとのこと。パオロさんがほかもあたってくれたが、満席だったため、待つことにする。Ristorante La Grottaという人気のレストランが定休日だったことも影響しているのだろう。
途中スパークリングワインをサービスしてくれたが、1時間後にようやく席が空く。
メニューの中から生ハム(プロシュート)、ハム、サラミなどの盛り合わせLa selezione di salumi toscani e di “Cinta Senese Il Poggio”con “cecina”。
生ハムプロシュートはパルマやが有名だがトスカーナの生ハムもおいしい。この店のものはあまり塩が強くないのがいい。チンタ・セネーゼ豚(チンタ・セネーゼcinta senese)は、トスカーナ州シエーナ地方で食用に飼育される古代品種の豚。ヒヨコマメの粉を練って焼いたCecina(チェチーナ)が添えられていた。
野菜のトスカーナ風フリットIl Gran Fritto Toscano” di verdure in tempura con salsa leggermente、テムプラの名の通り、確かにどこか野菜天を思わせるようなサクサクとした大きなフリット。
手打ち伝統的ピチとイノシシのラグーとペコリーノチーズ・グラン・リゼイルヴァI “Pici” della tradizione fatti a mano con farina macinata a pietra, al ragout di cinghiale e pecorino Gran Riserva(-Traditional “Pici” hand made with wild boar ragout and “Pecorino “ sheep cheese Gran Riserva)、これぞシエナ地方の伝統的郷土料理のパスタ。さぬきうどんの様な太さとコシがあり、臭みの少ないイノシシのラグーとクセのないトスカーナの羊のチーズ、ペコリーノの組み合わせは、しつこさのないエレガントな味わいで、うどん派も満足できる日本人向きの味わい。
ビステッカ・アラ・フィオレンティーナLa bistecca “fiorentina” di razza Chianina certificata alla griglia -“A la fiorentina” grilled t-bone steak “Chianina” beef certified(Served with cannellini white beans) (100gr) € 5,50を注文して、シェアして食べる。
1キロ程度の量をカットしてくれた。和牛と違って脂の少ない筋肉質の赤身だが、繊維がサクサクしていて、肉汁も感じられる歯ごたえのある食感が良い。有名な郷土料理だが、地元の人もそうは食べないようだ。量も大きいが4人でシェアしてもかなりの量だった。
どれも素材を活かした郷土料理そのものだが、塩味もほどよい加減でレベルは高い。ワインはもちVINO NOBILE DI MONTEPULCIANOポリツィアーノ ヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ この土地の代表的ワイナリーで完成度は高い。
2人の若いイタリア人たちは日本語が堪能で、かれらがかつて住んでいた日本の浅草や金町など話、パオロさんの勤めていたイタリア文化センター、フランチェスコ君の勤めていた外国人向け宿泊施設、南イタリアの話、12月の結婚とモルディブへの新婚旅行、来年日本に来る話など大いに話は盛り上がり、遠くモンテプルチャーノの夜は予想外に楽しめた。帰り道、若い恋人たちがホテルまで送ってくれたが、トンネルが閉鎖されていたため、道がわからなくなるハプニングもあり、フランチェスコ君が町の人に道を訪ねてくれて、何とか戻ることができた。