たまプラーザのイトーヨーカドー北側の通りを山内中学校北川交差点に向かったビルの2階、一昨年暮れにオープンしたばかりの四川料理の中華レストランである。日曜日のランチタイムはほぼ満席で、中華レストランらしいクラシックな調度もあるが、清潔で洗練された品の良いインテリアのダイニングルームだ。
日曜のランチのメニューは担々麺やなどの麺類のほか、日替わり定食(1300円)がある。一品料理はないようだ。この日は鶏唐揚げと茄子の甘酢ソースがけと麻婆豆腐の2種。2人で1品ずつ注文してシェアする。
前菜はキュウリの甘酢漬け、春雨の醤油炒め。ザーサイと卵スープが付く。キュウリの甘酢漬けは包丁の細かく入ったキュウリの酢の物。かなり甘いが辛味の効いた四川料理とのマッチングは良いだろう。
春雨は出汁の旨味が感じられ、かなりシンプルだが味はしっかりしている。
ザーサイやかなり薄くカットされ、薄く繊細な味わいである。
特筆すべきは卵スープ。具材はほとんど卵だけで、濃厚な溶き卵の素材本来の香りとコクが抽出されている。卵料理でこれだけ凝縮感が感じられるのは珍しい。街の中華料理店でよくある、とろみのある溶き卵スープとは全く違った緻密で濃厚な味わいである。出汁は鶏だろうか、それにしても卵のボリューム感がすごい。
メインの鶏唐揚げと茄子の甘酢ソースかけ。油淋鶏に茄子を加えた料理である。しょうがの香りがフレッシュ。鶏肉は薄い衣がふんわり軽く揚がっていて、肉が柔らかくジューシーである。茄子は小さいカットだがこちらも火入れが軽く油がジューシー。味付けは上品で葱や生姜がスパイシーだが、唐揚げが軽いため、エレガントな料理となっている。辛くはない。
麻婆豆腐の豆腐はソフトで豆鼓で塩味をつけ、辣油で辛味をつけていて、豆板醤の刺激的な生の唐辛子の辛さや塩辛さが控えめであるため、みその香りが際立っていて、風味と味わいが豊かだ。山椒はほとんど感じられないが、山椒を効かせた陳麻婆豆腐は+200円で別に用意されている。
山椒を抑えたエレガントな麻婆豆腐は最近の流行ではないかもしれないが、本来の味噌や豆腐などの大豆の味わいが感じられて、個人的にはこちらの方が好みである。
杏仁豆腐は最近流行の生クリームたっぷりのものとは異なる。もちもちと弾力性はあるが、ややざらついた食感が感じられる。杏仁の粉を使っているのか、かなり香りが強く感じられる。
テーブルの余裕はないものの、サービスレベルは高く、居心地はよい。
四川料理の常識が覆される、スパイス使いは控えめで、素材の味を生かしたエレガントで繊細な料理である。ワイングラスも様々なタイプが揃っていて、ワインのレベルの高さも予想される。
一度、夜訪れたいレストランである。