ららぽーと湘南平塚が昨年平塚にオープンしました。オープンから半年、平塚市の商店街とららぽーと湘南平塚の現状を見に行ってきました。
JR平塚駅で下車、まず、街を歩く前に昼食。うなぎや穴子天丼も魅力的でしたが、平塚駅南口から近いミシュラン掲載のOndaというイタリア料理の店へ。
12時開店で店の前には行列ができはじめ、オープン直後でほとんど満席の人気店です。ランチは1700円のコースがベースで、前菜盛り合わせとパスタの組み合わせです。メインやデザートの追加も可能です。
パスタは4種類から選べます。2人でシラスのスパゲティーとイカのトマトソースをシェア。
前菜は湘南野菜や地元の魚介などを使った内容で、ボリュームとバラエティがあります。揚げパンも付きます。湘南産の鯵のカルパッチョが新鮮で美味でした。
イカのトマトソースは、やや太いスパゲティーがアルデンテで食感が心地よいです。湘南産の食材のほか三重県尾鷲産の食材も使っていてこのイカは尾鷲産でした。
フレッシュなキャベツとシラスのスパゲティーニ。細麺で繊細な味わいです。ワインはイタリアの自然派が中心。グラスワインとして、ヴァレ・ダオスタのシャルドネとヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ、ガルガーネガのオレンジワイン、とかなりマニアックなものまであります。かなりの満足度です。
昼食を終えて、まず、既存の商店街へ。駅ビルのラスカ、湘南地域のJR系の駅ビルです。かなり賑わっています。デパートに入っているような全国チェーンの有名店があります。
個性あるデザインのトイレが特徴的で、特に2Fと3Fの中間階には女性専用のパウダールーム&サロン「マーメイドルーム」があり、休憩スペース、トイレなどが併設されています。
駅前広場はバス乗り場が広がります。神奈川中央交通のバスが大変な台数です。全国的に見てもこれだけバスが集まっている駅前広場はないでしょう。公共交通のバスのターミナルとしての平塚駅の拠点性が感じ取れます。高齢化が進むとともに、駅周辺の駐車場不足、狭い道路が多く渋滞が多い湘南エリアの事情にもよると思われます。
駅前広場に面する梅屋は2012年までは市内唯一の百貨店でしたが、業態変更してファッションビルユーユー・ウメヤとなり、全国チェーンの店舗が入っています。
駅前の商店街は紅谷パールロード商店街です。梅屋の旧本館はこちらの通りに面しています。
かつては本店のあった十字屋や長崎屋などの大規模店で賑わっていた商店街ですが、現在は閉店して長崎屋のあとはパチンコ店に。
しかし、かなりの人通りがあります。全国チェーンが多く、シャッターのしまった空き店舗はほとんどありません。平塚に本拠を置く湘南ベルマーレのフラグが地元への密着を感じさせます。
北平塚八幡宮に至る表参道の大門通りの新光会商店街、飲食店が多いです。
北に向かうと、旧東海道の湘南スターモール商店街があります。「湘南ひらつか七夕祭り」のメイン通りの商店街です。フラグはSTAR Mallです。宿場町の歴史が感じられる昔ながらの老舗が見受けられます。
オブジェやベンチ、マンホールのデザインなど文化を感じさせます。 やや人通りが少なく、自転車通行も多いですが、中小都市の商店街としては平均的なところでしょう。一部シャッターが見られますが、少ない方です。ひらつか市民プラザの管理運営主体は一般社団法人平塚市観光協会。このため物産販売所や観光案内所もあり、市内の観光地図を入手しました。
湘南随一の商都であった当時の面影はありませんが、商店街が縦横に交差し、商店街の名の付いたアーケードや街路灯がかつて湘南随一の商店街として賑わっていたころを偲ばせます。
川万の角を曲がって大門通りを平塚八幡宮方面に向かいます。この辺りは再開発ビルの裏通りで閑散としています。
平塚八幡宮に行くには、国道一号線を西に向かって信号のある交差点まで迂回しなければなりません。
太古より営まれてきた地域の歴史文化が、自動車交通の出現による国家の動脈建設によって分断されてしまいました。元旦の11時から15時の4時間だけは直接国道一号線を渡って参拝できるそうです。
(大門会のサイトより)
地域文化を復興する「八幡宮と参道を繋ぐ横断歩道設置」の要望活動が商店街の大門会と平塚八幡宮、自治会の協力のもとに行われています。国道一号がバイパスもなく、このような地方都市の市街地中心部を貫いているのも貴重なことですが、この国道一号線がなかったら、大門通りは平塚八幡宮の門前町として、浅草の仲見世のようににぎわうことでしょう。最近地方都市も訪れるようになった外国人観光客のインバウンドコンテンツとしても魅力あるものになるでしょう。大門会ではかつての表参道の賑わいの復活を目指して毎年11月の大門市など、イベントをこの通りで開催しています。
(大門会のサイトより)
平塚八幡宮は広い境内と大きな社殿の立派な神社です。古墳時代からの歴史がある相模の国の中心となる由緒ある神社です。平塚の宝でしょう。
かなりの参拝客でにぎわっていました。幼稚園も経営しています。池の鯉や鴨に心が和らぎます。
ここから、駅前通りの交差点にかかる車社会の象徴、歩道橋を渡り、左折して市役所の方に向かいます。大きな食品スーパーヤオコーの角を曲がって、そのまま進むとららぽーと―湘南平塚です。駅方面から歩いている人もいます。
平塚駅から徒歩12分とのことですが、もっとかかりそう。バスは1時間に5本とかなり頻繁にあります。駐車場の待ち時間もなく、渋滞もなさそうです。正式名称は三井ショッピングパークららぽーと湘南平塚です。日産車体の跡地に昨年10月にオープン。平塚駅の南口にシネコンも併設したOSCオリンピック湘南シティがありますが、平塚市内では、これに続く大型ショッピングモールです。
建物は直方体のボックス構造で、2つのストリート+吹き抜け。箱の制約のあるためか、今一つ面白みのない設計です。どこがメインエントランスかわかりにくい構造で、ランドマーク性はなさそうです。テラスの開放感のあるテラスモール湘南に比べると魅力がないのは事実です。
大型のキーテナントの面積がやや小さめで、中規模の個別店の面積を広めにとって、店舗数を抑えています。ベンチやソファーがおしゃれで快適。たぶん国内最高レベルでしょう。
このエリアではテラスモール湘南や湘南T-SITEが相次いで建設、一昨年オープンしたららぽーと海老名とも商圏が一部競合するため、テナントリーシングはかなり大変そうです。シネコンはなくラウンド1がアミューズメント系で出店。ノジマや有隣堂といった神奈川に本店のある店や赤ちゃん本舗なども重複しています。
一方、湘南エリアでは初出店なる東急ハンズが入っています。かつて政令指定都市以上の出店という方針だったハンズが、湘南市構想の中核である平塚市に出店したということでしょう。
有隣堂が運営する書店に併設したカフェ、STORY CAFEがあります。TSUTAYAのインスパイヤ―でしょうが、評価はすべきでしょう。。 それよりも注目すべきは、SHONAN TREE HOUSE。カルチャーイベントやワークショップを開催、このモールの中では最も先端的なスペースです。これは明らかに藤沢市のCCCの湘南T-SITEを意識したものと思われます。ちょっと小規模なため、中途半端な印象です。
同じくT-SITEの影響もあるとみられる、ららぽーと海老名のEBICENのような複合的な交流・コニュニティゾーンがないため、ショッピングモールとしては、やや保守的なイメージは否定できません。
湘南シーサイドストリートはテラスモール湘南の湘南ヴィレッジを意識した店舗エリアですが、湘南ヴィレッジは独立性があるエリアとしてカフェなども併設しているのに対して、モール2階フロアの1エリアのわかりに場所にあり、中途半端な規模は見逃しそうで、かなり誘客が難しそうです。
一方、フードコートの湘南Food Hallはかなり面白い。地元の日本料理樹勢や自由が丘蔭山樓、ラーメンつじ田など、路面店の名店の出店もあり、世界的にもトップレベルでしょう。
麹町の名店つじ田仙台の牛タン、利久自由が丘のフカヒレ中華蔭山樓。本店は行列必至、恵比寿店もいいですが、こちらはコースないようです。讃岐うどんは丸亀製麺をはずして、うまげな。関西発の丸亀製麺を追う香川発のはなまるうどんの新しいライン。
地元平塚の老舗日本料理樹勢もなんとフードコートに出店。レストラン街の湘南キッチンストリートも地元神奈川の店も出店、テラスモール湘南よりはレベルが高いようです。
一方、食料品はイトーヨーカドーが核店舗で、食料品関係のテナントは産直のわくわく広場やまぐろの三崎卸問屋鈴木水産など生鮮専門店の出店がありますが、テラスモールの湘南マルシェやラゾーナ川崎のようなバラエティはなく、規模も小さくなっています。特に、総菜部門はららぽーとらしい面白みがありません。
核ナントにGMSを入れると、どうしてもモール全体の魅力が希薄化するようです。イオンモールやららぽーと横浜のようにGMS全体がそのまま入っているケースがそうですが、食品スーパーだけの出店でも、GMSのイトーヨーカドーよりも専業の食品のスーパーの方が、生鮮や総菜の専門店と一体となって、食品ゾーンの魅力が増すようです。ラゾーナやららぽーと海老名、テラスモールなどは食品ゾーンがかなり魅力的です。
客数は年商500億円を超えたテラスモール湘南の方が明らかに多いようで、ららぽーと湘南平塚は目標が年商300億円としています。テラスモールは列車の本数の多い東海道線に乗って、横浜方面や小田原方面から誘客しており、駅直結の導線はかなりのプラス要素です。
館内放送によると横浜市戸塚区からの来場者が多いように思われます。わずか3駅ですから納得です。食品ゾーンの湘南マルシェでは魚の山金の刺身などの生鮮品が新鮮で、地元の惣菜店をはじめとする中食も魅力的でした。
ららぽーと海老名、ららぽーと立川立飛をはじめ、駅直結立地が続いたららぽーとですが、ららぽーと湘南平塚はららぽーと富士見ほどではありませんが、駅から離れた立地です。
モールとしてのビジョンやコンセプトに新しいものが少なく、コミュニティ機能や食のエリアの魅力がちょっと弱い。立地についても、細い道が多く、交通渋滞が多い湘南エリアでは、自動車アクセスの範囲が限定され、半径10キロを商圏とすると、OSC湘南シティ、テラスモール湘南や湘南モールフィルとも競合します。2018年には郊外のららぽーと海老名との中間点にイオンモール平塚もオープンする予定で、駅から徒歩12分という中途半端な立地は、かなり苦戦が予想されます。
駅周辺の商店街はテラスモール湘南のオープンの段階でかなり影響を受けたものと思われますが、駅ビルラスカ平塚、業態変更したユーユー・ウメヤ、全国チェーン店の並ぶ紅谷パールロード商店街と老舗の並ぶ湘南スターモール商店街と棲み分けができていて、低レベルながら安定しています。
平塚駅のJRと神奈川中央交通のバスのネットワークによる公共交通の拠点性からみて、今後の商店街の努力次第で、発展可能性はあるでしょう。平塚八幡宮前の横断歩道設置も重要なポイントです。
公共交通とららぽーと平塚の平塚駅からの微妙な距離が共存を可能にしていると思われます。