世界料理学会が9月9日と10日の2日間にわたって、函館で開催されました。この学会は函館の「レストラン バスク」のオーナーシェフである、深谷宏治氏が中心となって開催しているもので、今回で4回目になります。第1回目は18名の料理人だったのが、今回は36名が登壇するそうです。
第1日目の会場は五稜郭に近い函館市芸術ホールです。地元の関心が高く、会場はマスコミの取材スタッフで混雑していました。
まず、主催者である世界料理学会 in HAKODATE 実行委員会を代表して、深谷宏治氏が挨拶をされました。
そのあと報告を行う料理人がすべて壇上に上がり、こぶしを突き上げて気勢を揚げました。
深谷氏は、この学会が公的助成やスポンサーによらない料理人の手作りの学会であることを強調されていました。このため、登壇者の紹介もプロの司会者ではなく、参加者である料理人によって行われます。
この日の最初の報告者は、シンガポールの「andre」のオーナーシェフ、アンドレ・チャン(André Chiang)氏です。紹介するのは「日本料理・龍吟」の山本征治氏です。
アンドレ・チャン氏は台湾出身で、日本の甲府市で父の中華料理店を手伝った後、単身で渡仏。ピエール・ガニエールなどのヌーべル・キュジーヌの巨匠に師事、南フランスなどで研さんを積み、2010年10月、シンガポールのチャイナタウンの近くに「andre」をオープンさせました。
アンドレのディナー(8皿)にはアンドレ独自の料理哲学Octaphilosophyの根幹を成す8つの要素が体現されています。
8つの要素とは、Pure(調味料は使用せず、素材のありのままの味を楽しむ)、Salt(海の大いなる恵み)、Artisan(世界中のアルチザンが作り出す伝統ある食材)、South(アンドレの心の故郷、南仏の大らかさ)、Texture(食感の妙味)、Unique(最高かつ最もユニークな素材同士の組み合わせ)、Memory(思い出が詰まった1998年以来不変の1品)、Terroir(大地への讃歌)だそうです。この日は、スライド映像でこの8つの要素のプレゼンテーションが行われました。
隣で通訳しているのアは、アンドレの日本人ソムリエのKen Hasegawa(長谷川憲輔)さんです。
食材の特性や伝統的な調理技術を生かしながらも、自らの創造性と技術により、ストーリー性のある料理を造りあげるアンドレ・チャンの料理哲学が感じられるプレゼンテーションでした。
このアンドレ・チャンの「andre」には9月25日に伺い、実際の料理を味わう予定です。