朝食はビュッフェですが、スペインらしくオムレツはその場で具材を指定して作ってくれます。脂の甘いイベリコ豚の生ハムやサラミなど高級食材をいただける本場の朝食は最高です。
テラスから見下ろせるゲッゲンハイム美術館や周辺の景観も素晴らしいです。
このホテルは、客室内も美術品が飾られ、アートの雰囲気が漂うホテルでした。
時間もないので、早速、市内観光に出発です。
街では朝食をバルで食べている人が多く見かけられます。カウンター一杯にピンチョスが並べられ、こちらも美味しそうです。
最初の目的地は2006年に世界文化遺産に登録されたビスカヤ橋です。街を流れるネルビオン川の下流、ビスカヤ湾に近いところにあります。昨日行ったプラザ・モユアにあるモユア駅から地下鉄で約20分のところにあります。ビオバオの地下鉄は2路線、38㎞の延長があり、1995年に開業しています。市内と郊外の都市を結ぶ都市近郊鉄道の性格をもっています。
地下鉄は英国の建築家ノーマン・フォスターの設計で、ガラス主体の曲線的な出入口は、芋虫のようでもありますが、シンボリックなデザインで一目で地下鉄の入口と確認できます。
ホームとプラットフォームは大きな筒状の空間の中に立体的に配置され、入り口と地下へのエスカレーター、構内が共通のデザインコードで設計されているため、美しい統一感が感じられます。
車両の内部もグレーを基調に赤いシートのアクセントがモダンで、シートも座りやすい設計になっています。運賃はゾーン制になっていて、券売機も分かりやすく、スマートなデザインです。すべてに洗練された設計思想を感じる地下鉄です。
ビスカヤ橋Puente de Vizcayaへは地下鉄1号線のアレエタAreeta駅で降ります。パリの地下鉄とは異なり、出口にも自動改札機があります。
駅の外は広場になっていて、商店もまわりにあります。
左折して商店街の中を歩いて行くと、ビスカヤ橋に着きます。沿道の商店街も結構きれいで、多くの店が開いているなど、日本の中規模都市の近郊よりも都会的で活気のある街並みは、地下鉄の開通の影響もあるのかと思われました。
ビスカヤ橋はかなりユニークな橋です。橋げたから吊るされたゴンドラに乗って車や人が対岸に渡る仕組みになっています。クレーンで吊るされたフェリーといった感じでしょうか。
橋げたの上を人が渡ることもできますが、こちらは5ユーロと観光料金です。チケットの自動販売機はバスク語とスペイン語の2言語表記で英語の記載はありませんでした。チケットの自動販売機で購入できるのはゴンドラのチケットだけで、橋桁にに登るためのチケットは売店で購入します。売店の人が橋桁のエレベータまで案内してくれて、鍵を開けてエレベータに乗ることができる仕組みです。
この橋梁は高さ50m、全長160mほど、パリのエッフェル塔の設計者、エッフェルさんの弟子、アルベルト・パラシオの設計で1893年に作られました。橋桁まで登るとかなり高さを感じます。眺めは素晴らしいのですが、下が板張りで両サイドはフェンスのため、足が少し竦みます。
途中、風景の図や橋のバスク語+西英仏3カ国語のインフォメーションがあり、しっかりと観光客対応しています。クレーンのホイール1個65㎏の物が18個使われているとのことで、実物の展示もありました。
展望台感覚で、赤い瓦屋根の建物が並ぶネルビオン川河口周辺の港町やビルバオの街を見渡すことができます。橋桁を対岸まで歩いて渡ることもできます。
橋ははるか遠くの街から太いケーブルで支えられています。
再び街を通ってAreetaの駅に戻ります。さらに多くの店が開いています。
ゴミ収集車も来ています。地下鉄の駅前広場も賑わってきました。
地下鉄の駅や車両だけでなく、インフォメ―ションや券売機もおしゃれです。
しかも、フランスの券売機よりもはるかにわかりやすくなっています。
ビルバオ地下鉄はオレンジ色のシンボルカラーです。アンダイエからサン・セバスチャンを経てラサルテ・オリアに至るトポ線と同じバスク鉄道により運営されていた路線の一部を含む、延長43.31㎞の2路線からなるものです。バスク州政府と自治体で構成されるビスカヤ輸送コンソーシアムが出資するメトロ・ビルバオによって運営されています。
1号線を中心市街方面に戻り、Casco Viejoという駅で降ります。スペイン語で旧市街という意味です。地下鉄のCasco Viejo駅の上は旧市街の一角にあり、駅の前にはロマネスク様式のサン・ニコラス教会と広場があります。
旧市街の細い道路の多くは歩行者専用の道路で、両側は狭い間口の商店が連なっています。
特に、魚屋が多くマグロやタラなどのなどの日本でも見られるような大きな魚が店頭に並べられ、切りさばいて売っています。
旧市街の中心にはゴシック様式のサンチアゴ大聖堂があり、その前の広場にはあり、多くの人々が訪れています。
さらに細い道を行くと車の通るリベラ通りに出ます。
この通り沿いにはネルビオン川の岸に沿った形でリベラ市場があります。リベラ市場は改築工事が行われているところでした。半分が完成しており、一見、歴史的建造物のように見えますが、外側はガラス張りで、ステンドグラスもあり、近代的なショッピング・センターのような建物です。市場の前にはこの街のトラム「エウスコ・トラン」の停留所もあります。
市場は多くの観光客と地元の買い物客で賑わっていました。市場の中にはバスク名産のバスク豚やイベリコ豚の生ハムや生肉、ソーセージ、サラミ、オリーブ、果物、野菜などが売られていました。
肉製品はかなり安いようでしたが、たぶん日本には持ち帰れないため、購入は断念しました。
ビルバオの旧市街の一角にも、サン・セバスチャンの旧市街のようなバルが集まっている通りがありました。夜はバル巡りで楽しそうな街です。
また、トラムの走るリベルタ通りに出て歩いて行くと、市立音楽学校やアリアガ劇場Teatro Arriagaがあります。アリアガ劇場の正面にはアリアガ広場があり、観光バスも集まるなどこの辺りは旧市街観光の拠点となっています。
川にかかるアレナル橋を渡ると新市街のアバンドAbandoというエリア。
ここはビルバオ最大の交通拠点で、スペイン国鉄Renfeのビルバオ・アバンドBilbao Aband駅、スペイン狭軌鉄道FEVEのコンコルディア・デ・ビルバオ駅Estación de La Concordia de Bilbao、とトラム(エウスコ・トランEuskoTran))と地下鉄のアバンド駅がすべてここに集中しています。ヨーロッパの都市ではよくあることですが、公共交通の戦略的なプランニングのレベルの高さを感じます。
バスク鉄道EuskoTrenの運営しているトラムは先の旧市街のリベラ市場、ゲッゲンハイム美術館、サッカースタジアムのサン・マメスを結んでいて、使い勝手のいい路線です。2002年に新たに整備されたもので、1995年の地下鉄、1997年のゲッゲンハイム美術館、建設中のサッカースタジアムなど積極的な都市インフラ整備の姿勢がうかがわれます。
バスク鉄道とバスク狭軌鉄道の複合駅も規模の大きいものでした。
ここから環状道路のUruquijo Aldapaを南西に進みます。途中、カジノGran Casino Bilbaoもありました。
この通りにある、コルマド・イベリコColmado Ibéricoがビルバオ最後の目的地です。この店は、レストラン、バル、ワインショップ、デリカテッセンの複合店です。バルでの食事とワイン購入のため立ち寄りました。
バルにはサン・セバスチャンのバルと同じで、カウンターにクリームコロッケやカニ・グラタン、海老と野菜のマヨネーズ和えサラダ、イベリコハムやアンチョビなどバスク産の食材などの多彩なピンチョスが所狭しと並べれられていて、ピンチョス・コンテストで入賞し、ミシュラン・ガイドにも掲載されている店だけのことはあります。
グラスのワインを飲みながら、スペイン最後の食事は短い時間ながら充実したものとなりました。スペインの昼食にはまだ相当早い1時前でしたが、優雅な昼食をとることができるのはバルならではのものです。隣のカウンターでも地元の人々がワイングラスを片手に談笑していました。
隣のワインショップにはスペインワインが棚いっぱい並べられています。ここでは、リベラ・デル・デュエロのPesqueraとスペインで2番目に高価なワインのウニコVega Sicilia Rsva. Especial Unico2本を何とか購入しました。日本の半値以下です。スペインワインは、高価なものが日本の価格と変わらないフランスワインとは異なり、高価なものほど現地価格が割安なようです。店員はスペイン語しか話せないとのことでしたが、英語を話せる客の女性がたまたまいて通訳をしてもらいました。親切に感謝です。スペイン人には英語は通じないと思っていた方が良さそうです。
ホテルで預けた荷物を受け取ってタクシーで空港へ向かいます。市街地から山を越えると20分程度で到着、便利なところにあります。エールフランスやルフトハンザも就航しているため、日本からのアクセスの良い空港です。ターミナルビルも近代的でデザインもおしゃれなものです。
乗り継いだパリのシャルル・ドゴール空港はシャトル・バスでは、ターミナルをぐるぐる回ったうえ、エアポート・シャトルに乗り換えなければなりません。それに比べて、はるかに快適なビルバオ空港でした。
ビルバオ市は人口約35万人、スペインで10番目の都市ですが、地下鉄、鉄道、トラム、空港といった交通インフラ、旧市街の歴史的な街並み、緑に多い快適な公共空間、ゲッゲンハイム美術館やビルバオ美術館、サッカーチーム、アスレチック・ビルバオとその本拠地のスタジアム、サン・マメス、オペラ劇場、大聖堂、世界遺産のビスカヤ橋など、その公共インフラと文化施設、文化遺産は世界に誇るものがあり、日本の政令指定都市レベルの都市としての風格を感じます。これは、ビルバオ市が鉱業、製鉄、造船業による富の蓄積とそれらの産業の衰退に対応して、観光とサービス業に軸足を移すために都市インフラの戦略的な整備を進めてきた成果であり、特に公共交通の整備と文化創造都市を目指す文化施設の整備の2本の基幹政策を、相互に関連させながら進めるという戦略は先進的であり、人々の集い・賑わいを創造する都市戦略として日本の都市も見習うべきものが多いと思います。