18日土曜日のディナーは久しぶりに白金のアルシミスト。複数の素材から料理を造り上げる創造力に相変わらず驚かされます。
素材の食感や質感を素直に生かした料理ではなく、それぞれの素材の持つ特性を、既成概念にとらわれず、様々な調理技法により再構築、融合させることにより、感性が凝縮された料理として皿の中に表現されているのが、アルシミストの料理の特色です。
一見脈絡なく現れる料理の一皿一皿に、統一感が仕組まれています。たとえば、料理のドレスコードとして店のシンボルカラーの紫色と季節のシンボルカラーの桜色がセットされていました。各皿は器とともに現代生け花や抽象画のようにヴィジュアルに、造形的にまとめられています。昨年より、料理のアートのレベルが上がっていて、完成度(感性度)がアップしているようです。
表現されているものは、様々な表情の自然ですが、食材の特性にも配慮しながら、調理技術や、創作性、表現性、エンターテイメント性などにより五感と知性に様々な形で訴えかける、クリエイティブな料理です。一方、ペアリングで出されるワインは自然派ワイン中心の料理に馴染むワインです。
ファワグラのマカロンがフォワグラのエクレアに進化していました。豚の皮をスナック菓子のように揚げたチチャロン。
瓶のふたを開けると、玉手箱のように燻蒸香の煙が噴き出し、ガラスにスポンジ状のサーモンが入っています。いきなりサプライズの遊び心にあふれるアミューズ。
店のスペシャリテで必ずこのタイミングで出される一皿。凍ったフォワグラのテリーヌをすりおろした皿に、温かいレンズ豆のスープを注ぎ、少しずつ溶けながら変化する味わいを楽しむ、水平的に味わいの波紋が広がる料理。
季節アイテムのホタルイカと宇和島産ブラッドオレンジの絶妙な相性の良さ。垂直方向の味わいと抽象画になっています。
定番のブーダンノワールだが、今回は根菜との組み合わせで、土や鉄っぽい大地の味わいを楽しみます。後から注がれるのは鴨のスープ。
シンボルカラーの紫の作品。ジャガイモにキャビアという組み合わせに紫の器、抹茶碗紫式部をコーディネート。
味わいが単調になりがちなカジキマグロは中央部をミキュイにして、淡い花びらの色合いからめしべのような紫蘇から染み出したように鮮やかな桜色が広がる。美感、食感、季節感をマッチングさせた一品。あわせたのは山口の大吟醸「獺祭」、デザートへの伏線でもある。
オレンジ色とグリーンの明るくフレッシュな組み合わせ。春のあたたかい生命や緑を感じる。
桜色の肉と雲丹にクレソンのソース。緑の野菜の躍動感。生命感みなぎるメインに合わせるワインもタヴェルの自然派ロゼワイン。
サラダのようですがデザート。
酒粕のアイスクリームと苺に春菊のソースという組み合わせが、パステル抽象画のよう。アートに春を味わう。
横になったグラスに入ったパイナップルとチョコという、現代アート風のシュールなオブジェのデザート。
〆のマカロンも紫。