ARZAKはスペイン北東部のバスク地方、サン・セバスチャンの旧市街の中心部からバスで10分程度、郊外に入ったところにあるミシュラン三つ星レストランです。
着いたのは1時、予約の時間は店がオープンして直後の、1時30分、スペインの昼食の始まるのはかなり遅くなっています。パリの三つ星レストランのようにラグジュアリーな空間ではないですが、日本の三つ星レストラン、たとえばカンテ・サンスと同程度の空間構成のレベルではないかと思われます。
ベテランのサービス担当のマダムから渡されたのはアラカルトのメニューでした。デギュスタシオンのメニューはないのかと聞くと、テーブルの上にもう一つのメニューが既に置いてありました。
少量ずつ出されるこちらの方を注文しました。サービス係の若いスキンヘッドの男性はやや緊張した面持ちの対応です。
アペリティフはどうかと聞かれるので、思わずシャンパーニュを注文しました。癖になっています。CAVAでも良かったのですが・・・。グラスのシャンパンはルイ・ロデレール、かなり保守的です。
ワインリストには20ユーロ程度のワインから、600ユーロ強のかなり高価なスペインワインまで実に多くのスペインワインと、フランスなどの外国ワインが少し掲載されていました。恰幅の良い人の良さそうな、いかにもスペイン男らしいソムリエが30ユーロ弱のワインを進めるので、料理とのバランスで少し心配になって迷っていると、アリオンAlion2008を次に勧めてきたので今度は迷わずに決めました。ボデガス・ベガ・シシリアのオーナーの一家がつくるボルドースタイルのワインです。最初のワインも実はレベルが高かったのかもしれません。
料理のサービスはマダムが行います。まず、アミューズに当たる、Cromlech De Mandioca Y Huitlacoche「キャッサバとコーン・スマットの環状列石」という5種類の料理ののったプレートが出されました。そのうちの一つはドライアイスを使った、料理から煙が噴き出すサプライズを伴う料理でした。
Chorizo with tonic
炭酸とチョリソ。炭酸飲料の空き缶の上に乗ったチョリソ。
Corn.figs and black pudding
コーン、イチジク、ブラックプディン。コーンのスープにイチジクの実。プディンは花弁がまぶされた美しさ。
Kabraoka pudding with kataifi
オニカサゴのプディン、カタイフ添え
タラにも似たオニカサゴの身にカタイフをまぶしてコロッケ状に揚げた料理。ピンチョスのエビクリームコロッケ風でカリッと香ばしい味わい。シャンパンに最高に合います。
Gooseberry with coconut.
グースベリー、ココナツ添え
ドライアイスの煙の中から登場した、パリッと揚げたポテトチップスのような薄く切ったココナツに、ほおずきの実のようなグースベリーが添えられています。
Marinated sardines and strawberryイワシのマリネとイチゴ
メニューにはあった定番料理ですが、実際には出てこなかった料理です。代わりに細かい粒状のピスタチオと香草で巻かれた白身魚が出されました。
Cromlech with onion, coffee and tea 環状列石、玉ねぎ、コーヒー、紅茶
パリッと揚げたかなり薄い生地の皮のなかに、とろけるようにクリーミーなキャラメリゼされた玉ねぎとフォワグラの詰め物が入った料理。サクサクした香ばしい皮とコクのあるクリーミーで熱々の汁とフォワグラの複雑な味わい、玉ねぎの香ばしさなど、味わいと食感の調和が素晴らしい。コーヒーとお茶の粉が散りばめられています。
パンはかなり普通です。
Hemp`s mustard and lobster
麻のマスタードとロブスター。ロブスターは甲殻類独特の食感と香ばしさで調理レベルの高さを感じます。
Dusted egg and musselまぶし卵とイガイ
温泉卵のようなまろやかなポーチド・エッグにイガイのディスクがのっています。上にはかき揚げのような海草の揚げ物。シンプルながら味わいの深い料理です。
以下の魚と肉のメインは2人で別のものを選択しました。
White tuna, prickly pear and figs白マグロ、棘だらけの洋ナシとイチジク
半生に調理したまぐろに、海草を揚げたものだろうか棘とげの付け合わせが付いていました。
Gooseberry,Spelt and monkfishグーズベリー、玄米とモンクフィッシュ、
Monkfishという白身魚はアンコウのこと。淡白だが柔らかく脂ののった魚だが、甘酸っぱいソースが良く合います。甘酸っぱいグーズベリーに]乾燥したほおずき。
Pork fat and physalis豚の脂身とほおすき(右上)
フォワグラのような豚の脂肉の香りと甘酸っぱいほおずきの味わいが絶妙で美味でした。
Beef with vegetable screens牛肉と野菜のスクリーン
Pigeon with anthocyaninアントシアニンの添えられた鳩
鳩のローストに赤紫系の果実のソースを添えたもの。ミディアム・レアを希望したので、ソースに良く合う柔らかく、ジューシーな肉汁を楽しめました。臭みはなくマイルドでエレガントな味わいです。
Pigeon leg and hibiscus pudding(右上)
別皿で鳩の足がローストされ、ハイビスカスのプディングとともに出されました。こちらは香ばしく野性的な味わい。
Roots,fruits and seeds
チョコレートの入ったクリーミーなアイスクリームにジュレが添えられています。
Playing marbles with chocolate
小石のような丸いボールのチョコレートにクリーミーなソースが添えられています。
Golden footprint and ladybird金の足跡とテントウムシ
見るからに可愛らしいデザート。
Pistachio and beetroot stone
ピスタチオの乗った四角くサクサクのデザート。
Ice Cream Selection
アイスクリームのセレクション。デザートごとに四角い容器にチョコレート、コーヒー、バニラなどのアイスクリームが添えらています。
小菓子として、ネジ、ボルト、ナット、スクリューなどのチョコレート。それぞれ、チョコレートの味わいを変え、コーティングしたり、ナッツなど加えられています。それぞれ美味しいのですが、ここまで来ると胃の方もかなりの負荷となってきました。
The bolts were dark chocolate bits, and nuts were salted white chocolate blobs that were painted grey. Bottle caps were made of gelatin and topped with pop rocks, while the keys were silver dusted chocolate.
全般にはオーソドックスながら機知にとんだインテリジェンスを感じる料理の数々です。鳩のローストはミディアム・レアに焼いてもらったのですが、柔らかくて火入れが絶妙で素晴らしく思いました。低温調理なのでしょうか。レストラン内に研究室を設置し、調理科学の研究を行っているだけに、調理レベルはかなり高く、世界のレストランランキング8位にふさわしいレストランでした。
スペインを代表する世界的な料理人であるシェフのファン・マリ・アルサックJuan Maria Arzakも、サン・セバスチャン映画祭のVIPが来店していたためか、姿を現していました。食事が終わってから一緒に写真を撮らせていただきました。
食事の終わったのは4時30分。3時間の長時間ランチでした。