札幌ガストロノミー、シリーズその1はSIO。
SIOは札幌のハイレベルの店が集まる裏参道に面した、最高のロケーションのレストラン。ウィンザーホテル洞爺、ピエール・ガニェール東京やル・ミュゼを経験されたる佐藤陽介シェフの店です。エントランスからドアに至る長い廊下が美食の世界への期待を増幅させてくれます。
オープンキッチンというより、中央の大きなキッチンを囲むように配席された、センターステージの劇場型レストラン。カウンター席は5席ですが、テーブル席もキッチンを取り囲むように配置されています。すべてがオープンであり、隠されたものが何もない丸見えのレストランです。
キッチンはフル装備のフレンチレストラン仕様にプラスして、炭火焼き設備が備えられているのが特徴です。あくまでも料理人の使いやすさを重視した、広々したプロフェッショナル仕様のキッチンであることは間違いないでしょう。
素材を生かしているが、北海道の素材に徹底してこだわることはなく、道産食材中心に、全国から選んだ最適な食材で料理を作り上げています。
ワインはフランスが中心。ブルゴーニュが多く、アルザスやロワールもあります。リーズナブルな価格帯のものが多く、赤は2009や2006、白は2010や2008とヴィンテージが若いワインでも、今飲んで美味しく飲めるワインをそろえています。自然派ワインに注目すべきものがいくつかみられ、わずかに新世界のものもありました。よく考えられたワインリストです。
この店、全般に優しい味わいが特色です。このため、自然派ワインがよく合います。ワインリストにも自然派のものが見受けられます。フレデリック・コサールのシャルソネがあったのですが残念ながら品切れでした。
白ワインにビオ・ディナミの先駆者、二コラ・ジョリーのものを発見して注文しました。サヴィニエール・レ・ヴュー・クロ2010。メイン以外は魚の皿が中心の料理構成から白ワインで全体をカバーして、最後にグラスで赤ワインを合わせることにしました。このワイン、最初、還元的で苦味も気になりますが、時間がたつにつれて、急速に色が変わり熟成感が強まるワインです。摺おろしりんごのように酸化が進み赤味が強くなっていき、甘さやコクがましてふくよかなワインに変身していきます。
今回は前菜、魚料理、豚ロースに白を、サフォーク種のヒツジにはブルゴーニュ・ルージュ(アラン・ジョフロワ)を合わせました。
最初にメインの肉料理の食材を見せてくれます。留寿都の豚ロース、豚スペアリブ(脂が多い)、ソーセージとベーコン、牛、鶏2種、青森産シャモロック、ビゴー家のシャラン鴨、別海産サフォーク羊と全9種類。どれも魅力的です。豚ロースとサフォークを選びました。
シャンパーニュはルイ・ロデレール。グラス1000円は良心的です。
アミューズはまず、卵が入ったふんわり、ねっとりした温かいお菓子。ほんのり塩気が感じられます。
ポプコーンは最近の流行のようです。味噌風味のスパイシーな味わい。
富山産白エビのフリット。今が旬の富山にしかない味です。大きめの海老がカリッとふんわりです。
こちらも富山産のホタルイカ。行者ニンニクで臭みが緩和され、きれいな味わいに。行者ニンイクのパウダー、グリーンのソースはホウレンソウ。青臭さはなくきめ細かく甘くクリーミーです。ビオワインの酵母系の味わいがよく合います。
サクラマスは低温調理したミキュイの状態で、柔らかくジューシーな味わいです。ウイキョウとオレンジ風味のニンジンスライス。味わい豊かなカブ。グレープフルーツの柑橘のさわやかさもあり、一見シンプルでさわやかながら、奥の深さを感じます。春らしい明るく鮮やかな彩りです。
アスパラガスの炭火焼。卵は多分62度調理の温泉卵風。春の味わいのモリーユ茸、パルメザンチーズのテュイール。この組合せはこの季節最高でしょう。フォワグラやトリュフがなくても、満足いく一品。それにしても、モリーユはそこらの平地に生えているというがほんとでしょうか。アスパラの新鮮な食感は炭火焼で増幅されるよう。白アスパラ産地のロワールのシュナン・ブランも良く合います。
赤く長い魚のヤガラは、白身魚の淡白さがある一方、緻密な食感が面白い。輪切りにした切り身を見せてもらいました。顔がとがっていて怖いそうだが、身は優しいお味です。グリーンピースのソースとカブのエスプーマのクリーミーな味わいとのコンビネーションです。
2つのメインをシェアしてくれました。付け合わせは焼いた菜の花です。 別海町のサフォーク種の羊肉。甘い脂があって緻密で柔らかく濃厚な味わい。最高の肉質です。肉の間の焦がしキャベツとアンチョビのソースさらに複雑な味わいになりました。これにはブルゴーニュのピノ・ノワールを合わせました。
あっさりした味のローストポークには、粒マスタードというドイツ的な組み合わせです。こちらにはニコラ・ジョリーを合わせます。リストにあったトリンバックのアルザスのピノ・グリも良いでしょう。