ミシュラン北海道3つ星の店。円山の北海道神宮の参道入り口に近いマンションの1階にある。
マダムがフレンドリーに迎えてくれる。ドレスコードはなく、観光客がジーンズで訪れても快く迎えてくれるそうだ。
周辺の高級住宅地に住んでいると思われる家族がゆったりくつろぎながら、週末のディナーを楽しんでいる。
ディナーのメニューは3種類ある。1番高いでコースでも9900円と東京では考えられない価格。このコースだけ品数が多くなる。アワビがちょっと魅力的だったが、真ん中のコースの滝川産鴨に惹かれてこれを注文する。
まず飲み物のリストが出される。シャンパンと白ワイン又はシャンパンと赤ワインのセットが1900円であるので、赤ワインはボトルで注文することにして、白ワインとのセットを注文。シャンパンはモエ・エ・シャンドン、白は2種のうちからシモン・ビーズのACブルゴーニュを選ぶ。
アミューズは2種類でジャガイモのタコス風と鱈のブランダード 伊予柑のコンフィチュール。ジャガイモをチーズのタコスで包んだ料理はパリッとした食感で香ばしい。ブランダードで伊予柑の組み合わせは珍しい。
2皿目のオードブルは25種類の春野菜の取り合わせ 生ハムとハーブの香りを添えて。モリエールグループの得意の野菜料理。彩り豊かな春野菜が絵皿のように広がる。後からゆで上げたばかりの新鮮なグリーン・アスパラが加わる。
シモン・ビーズのACブルゴーニュは果実味が豊かで、クリーミーなニュアンスもあるが、新樽の香りはない。
メインの魚は函館差桜鱒のミキュイ クレソンのクーリー。ミキュイとは半生のこと。脂の良く乗った桜色の鮮やかな桜鱒を生に近い状態で調理している。実にきめ細かくなめらかな食感。やや川魚独特の香りがあるため、香りの強いクレソンを添えて臭みを消している。
ワインはここから赤ワインを合わせる。ジョルジュ・リニエ モレ・サン・ドニ・クロ・デ・ゾルム2002。予め抜栓してもらったためか、ストローベリーのような赤系果実の香りが、華やかに香る。程よい酸味と果実味にきめ細かくなめらかなタンニン。やや甘みも感じられる。赤ワインとしてはかなり繊細な味わいのため、やや癖のある桜鱒に良く合う。
紅茶のシャーベット
滝川産合鴨のグリエ 大根のコンフィ 芹の香り。合鴨はかなり大きめのブロックをグリエしているが、低温でじっくりと炙っているため、中まできれいに火が通っていて、深い味わいがある。肝のパテと大根のコンフィが付く。大根の周りのブラウン色は醤油のように見えるが醤油ではないそうだ。
真狩産じゃが芋のグラタンが後から添えられる。このクリーム風味には残しておいた白ワインが良く合う。
北海道産熟成チーズは旭川産の青カビと中札内産白カビ。日本のチーズのレベルもかなり高くなっている。
一ツ目のデザートは白ごまのブランマンジェ 青豆のクーリー。なめらかでコクのある味わい。
苺のコンポート ココナッツのディスク ピスタチオのグラス添え。ピスタチオのアイスクリームが濃厚。
小菓子とコーヒー。ハーブティは鮮やか。
サービスでは料理説明をほとんどしないホール・スタッフがいるなどレベルが揃ってはいないが、小さいレストランなので、マネージャー兼シェフ・ソムリエの小倉さんにワインのサービスの時に聞けば丁寧に説明してくれるので、特に不自由はなかった。
札幌市内唯一のミシュラン三つ星フレンチという評価は、料理・サービス共にやや無理があるように思えるが、美瑛のアスペルジュ、真狩のマッカリーナなど北海道の地元産素材を提供するフレンチ・レストランの拠点として、全国に情報発信した功績は大きく、ここでは素直に喜んでおきたい。
料理の出るスピードは東京やフランスのレストランに比べて、かなり早いような気がするが、これは他の札幌のレスストランや割烹にも共通することで、交通事情によるのかもしれない。
味は全体に濃い味付けとなっていて、これも寒冷地のためかもしれないが、さほど気にはならなかった。
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