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ワールドにみるブランド空白地帯、静岡県東部地域

西武沼津店撤退の背景には静岡県東部地域の特殊な商業構造や消費構造がある。一例として、このエリアには(株)ワールドのブランド・ショップが他の地域に比較して極端に少ないことがわかった。

(株)ワールドは神戸に本社を置く日本最大のアパレル企業である。女性向けを中心に100近いブランド数を擁し、キャリア向けからカジュアル、雑貨、メンズ、キッズに至るまで、また、百貨店店向けから、ファッションビル、RSC向けまで幅広いブランドを揃えている。静岡県内のワールドのブランドのショップを検索すると68件(全国で2935件)出てくる。

大都市部を除くと全国5万人に1店舗程度の割合で、ワールドはショップを展開している。映画の「下妻物語」に、郊外の巨大なジャスコ(現イオンモール下妻)の品揃えを地域の人々が誇りに思って買い物をしているというシーンが出てくるが、評価は別として、全国各地にオープンしたRSCのおかげで、全国各地で日本を代表するワールドのブランド品を購入できるようになったのは事実である。

静岡県の各エリア別に見てみると、ワールドのショップのブランドは中部に30件、西部に26件、東部に12件(御殿場のアウトレットを含む)となっている。このワールドのブランドを主観的ではあるが、百買店向け(DS)、ファッションビル向け(FB)、郊外型ショッピングセンター向け(SC)、アウトレットモール向け(OL)に分けて整理すると、中部がDS11件、FB12件、RSC7件、西部がDS8件、FB3件、SC15件、東部がDS0件、FB1件、RSC9件、OL2件となる。RSCの立地が進む西部のSCが多く、都市型大型店の立地の進む中部がDSとFBが多いのは理解できる。問題はSCはともかく、東部のDSとFBが少ないということである。

さらに静岡県東部から富士・富士宮地域と御殿場のアウトレット除いたエリア、沼津・三島・伊豆エリア(人口約70万人)を見てみると、DS0件、FB1件、SC2件となり、極めて少なくなる。都市型大型店の立地が進む静岡市から、より遠隔にあるこのエリアが少なくなるのは不思議である。

 他の地域と比べて見てみよう。まず、本州の北端にある青森県である。静岡県東部地域(人口124万人)よりも少し人口の多い(136万人)この県に23件ワールドのショップがあり、DS6件、FB3件、SC14件となっている。沼津・三島・伊豆エリアと人口規模の近い島根県(71万人)ではDS5件、FB1件、SC4件、鳥取県(58万人)ではDS2件、FB3件、SC7件となっている。島根県でDSが多いのはひとえに松江駅前のジャスコ跡地に移転オープンした一畑百貨店の努力によるところが大きい。

これらから分かるのは、静岡県東部地域のワールドのショップ件数がRSC向けを入れても極端に少ないこと、特に、沼津・三島・伊豆エリアでは、ほとんどないということである。これには、オンワード中心のブランド揃えの西武沼津店の影響もあるかもしれない。あるいは、ナショナルブランドの進入を拒否して、地域独自のブランドが進化したという、ガラパゴス化が進んでいるのだろうか。

いずれにせよ、このことから全国的にみても極めて特殊な静岡県東部地域の商業構造と消費構造が見えてくるような気がする。他のブランドや消費分野についても検証してみたい。

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