青森県八戸市の中心市街地は、東北新幹線の八戸駅から八戸線に乗り換えて2駅目、本八戸駅から徒歩で向かいます。

途中の民家や商店の壁ににフキダシが張られていて、いろいろなうわさが掲示されています。「八戸のうわさ」というプロジェクトだそうで、アーティスト 山本耕一郎氏による人と人との絆をつなぐアート・プロジェクトだそうです。かなりの取材量です。来街者と地域が一気につながり、地域の人々の生活感や文化が、以前から住んでいたかのように親しみのあるものなるのが不思議な感覚です。

http://hacchi.jp/op-art-project/hachinohe-no-uwasa.html

八戸市の中心市街地の三日町交差点。その一角にあるダイワロイネットホテルの1階のレストラン街にある1階にある「かん東」で昼食を。から揚げ定食が人気のようですが、さば定食にしmした。シメサバ、味噌煮込み、竜田揚げといった鯖料理が並びます。イカ水揚げ日本一の八戸ですので、イカ刺し定食もありましが、最近は高品質な「八戸前沖さば」のブランディングに成功したため、八戸はすっかり「さばの街」になりました。茨城や長崎の方が漁獲量は多いのですが、量より質の時代です。 八戸市の中心市街地は賑わいが戻りつつあるようです。地元の人々やスーツケースを引っ張ている旅行者がかなり歩いています。日曜日にしてはちょっそ寂しいですが。

中心市街地には百貨店が2軒あります。百貨店が減少しつつある最近の地方都市の中で、これはかなり珍しいです。
青森県では青森市と弘前市と八戸市には百貨店が2店舗ありますが、政令市の仙台を除く東北の他の県庁所在市ではすでに1店舗となっています。

こちらはさくらの百貨店。丸光、ダックシティ、ビブレ、さくらのと名前が変わってきましたが、まだ生き残っています。

こちらは三春屋。旧ダイエーグループで、現在はイオングループです。

その二つの百貨店の間にあるのが、八戸ポータルミュージアムはっちです。この施設が全国のまちづくり関係者の間で注目されています。その背景には全国の中心市街地の衰退と地方都市の空洞化の根本問題があります。

文化とコミュニティの格差の問題です。

東京などの大都市に若者が集まる原因は、東京などの大都市の魅力である、文化とコミュニティにあります。

ショッピングモールの整備やネット通販の普及により、モノにおける地方圏と東京の物の格差はなくなってきています。しかし、演劇や美術、食、スポーツ、しゃれたカフェなど、都市中心部における文化的な環境の格差が大きく、トレンディで、スリリング、おしゃれな文化的な価値を体験のできる中心市街地が存在し、様々な意図と人との出会いが存在する場としての、コミュニティ・プレイスの存在が、大都市の大きな魅力として、若者を引きつける原因になっています。これから地方都市が若者定住を促進する魅力を増すためには、中心市街地の文化的な価値を高めて、人の集まるコミュニティの拠点性を高めることが重要である。

その意味で、八戸市の中心市街地政策は、問題点に的確に対応した、理にかなった戦略的なものがあります。民間ベースではみろく横丁など8つの横丁の飲み屋街が、提供するせんべい汁など郷土料理や地元食材を中心とした屋台料理とともに、地元民の夜のコミュニティプレイスとなるとともに、宿泊する観光客やビジネス客にとっても地元民のライフスタイルである横丁文化を共有したくなる魅力あるエリアとなっています。

一方、昼間の中心市街地は、郊外の大規模商業施設の相次ぐ整備により、空洞化が進み、人通りが減少していていました。その中で、打ち出したのが、八戸ポータルミュージアムはっちです。

ホームページによると、「新たな交流と創造の拠点として、賑わいの創出や、観光と地域文化の振興を図りながら、中心市街地と八戸市全体の活性化するため、2011年2月11日にオープンした施設です。「はっち」は地域の資源を大事に想いながら、新しい魅力を生み出していくところです。地域の資源を大事にすること、市民と協働すること、まちなかに回遊することを3つを意識し、事業を行っています。」とのこと。

市民の創造的な活動拠点であり、あわせて観光客のなどの来街者と市民が交流する拠点としての機能を合わせ持ってます。ちょうど横丁が夜に担っている市民の交流と観光客と市民との交流機能を昼の時間に持たせたものであるといえるでしょう。

はっちの中心市街地に与えた影響は大きく、はっち前の歩行者通行量は2015年、2010年度比109%増、市街地全体でも25%増となっています。

市民の創造活動の拠点であるだけでなく、共同スタジオ、コワーキングスペースを備えたものづくりのイノベーション拠点、産業振興の拠点としての性格を持っています。民間事業として展開されているT-SITEや最近のショッピングモールでもこのような地域住民の活動拠点、コミュニティ拠点の性格を有するものができていなす、このはっちが与えた影響が大きいでしょう。

はっちと協働する民間ベースの事業としては、前述の「八戸のうわさ」プロジェクトの仕掛け人、まちぐみアーティストの山本耕一郎さんと一緒に、八戸のまちに”なんか楽しそう”をつくりだす市民集団「まちぐみ」があります。

前述の街の人たちのうわさが書かれたフキダシを商店街に張り出す「うわさプロジェクト」のほか、商店街にある「まちぐみラボ」を拠点に様々な商店街の活動やイベントを展開しています。

http://machigumi.main.jp/

「はっち」には、まちづくりのキーワードが明確に伺われます。

①行政の整備した施設と民間の活動拠点の公民連携

②市民交流と観光客の交流の場

③文化施策と産業施策の融合

縦割り行政で従来バラバラに取り組まれてきた、文化、市民協働、観光、ものづくり、中心市街地活性化などの行政課題が、目的が融合した一つの拠点を整備するによって、密接に連携を図りながら、課題解決を図ろうとする総合的な取り組みであるというところに、新鮮さがあります。さらに、この施設の整備が周辺の新たな民間施設の整備に連鎖的な影響を与えていることが注目されます。

「本のまち八戸」の拠点施設で「八戸ブックセンター」
はっちに次いで中心市街地に整備されたのが八戸ブックセンターです。

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「本のまち八戸」は、市長政策公約として掲げられ、市政運営の基本となる「第6次八戸市総合計画」のうち、重点的に推進すべき5つのまちづくり戦略のひとつである「人づくり戦略-教育プロジェクト」の中に「本のまち八戸」の推進を位置づけています。

「本のまち八戸」事業としては、八戸市は、乳幼児(生後90日~1歳未満)とその保護者を対象とした「ブックスタート事業」、小学生を対象とした「マイブック推進事業」、3歳児とその保護者向けの「“読み聞かせ”キッズブック事業」を実施しており、これらに続く、主として大人を対象とした施設として、「中心市街地の活性化に寄与するとともに、市民の豊かな心を育み、本のある暮らしが当たり前となる文化の薫り高いまちを目指すため、本と出会う新たな機会の創出、本を通した市民交流及びまちづくりの拠点施設」として「八戸ブックセンター」が位置づけられています。

施設コンセプトは

八戸に「本好き」を増やし、八戸を「本のまち」にするための、あたらしい「本のある暮らしの拠点」

八戸ブックセンターでは、提案型・編集型の陳列による本の閲覧スペースの提供と販売、イベントの開催などを中心に、八戸市内の民間書店や図書館、市民活動などと連携しながら、本に関する公共サービスを提供すこととしています。

 基本方針

 八戸ブックセンターは、コンセプトに基づいた3つの基本方針を定め、施設運営をしています。

方針1 本を「読む人」を増やす

方針2 本を「書く人」を増やす

方針3 本で「まち」を盛り上げる


全国でも数少ない公営の書店であり、整備に当たっては民業圧迫になるのではないかなど市民の間で賛否の議論があったようです。しかし、中心市街地における文化拠点の存在は市の魅力を大きく高めるだけでなく、市民の本との出会いの場の拡大は、本好きの市民の充実した生活感につながります。

本に関する文化施設としては図書館があります。図書館を文化活動の拠点として位置づけ、行政として市民に親しまれ、本を読んだり借りるだけでなく、自己実現や生きがいを実現する市民のサードプレイスとして整備する試みは全国で行われています。

有名になったのは、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定管理者として指定し、カフェを併設、おしゃれな快適空間を作り上げた武雄市立図書館です。市民だけでなく、観光客まで訪れる図書館として、全国から視察が絶えない有名な公共施設となり、その後、全国の市町村でもCCC誘致の動きが続き、既存の図書館を改装して、指定管理者をCCCとした海老名市立図書館など、賛否両論ありながらも、市民に親しまれる施設として、大幅な来館者の増加を実現しています。

また、CCCは代官山の蔦屋書店を1号店として、湘南T-SITE、函館の蔦屋書店、二子玉川のショッピングセンターRISEにオープンした蔦屋家電など、従来の書店にない、書店を核として新しい文化、趣味、食、ライフスタイルなど、モノとサービスを幅広く提供し、新しい地域コミュニティを作る業態の店舗を整備しており、これらの立地により地域の魅力が飛躍的に増しています。さらに、銀座の松坂屋あとの大規模商業施設にもオープンする予定です。

八戸ブックセンターはCCCの施設の規模にははるかに及びませんが、提案型・編集型の陳列による本の閲覧スペースの提供と販売、本に関するイベントの開催などを中心に、市内の民間書店や図書館、市民活動と連携しながら、全国で類を見ない、これからの時代にふさわしい本に関する公共サービスを構想し、提供するという、チャレンジングなコンセプトをもっており、同じく中心市街地に立地しているハッチと連携しながら、CCCのコンセプトにも決して劣ることのない魅力的な事業と言えるでしょう。

中心市街地の活性化に寄与するとともに、市民の豊かな心を育み、本のある暮らしが当たり前となる文化の薫り高いまちを目指すため、本と出会う新たな機会の創出、本を通した市民交流及びまちづくりの拠点施設としても位置づけています。

これは、ハッチとも共通するもので、文化の薫り高い街づくりを中心市街地で展開することにより、八戸という都市の魅力高め、地域のブランディングを行い、住民にとっても来街者にとっても満足レベルの高い街を創ろうとする一貫したコンセプトが貫かれています。

蔦屋書店よりもさらに先を走っているイメージです。

八戸の中心市街地では新しい美術館と屋内スケート場の整備が進められており、これらの施設の連携により、中心市街地の魅力がさらに増していくことが期待されます。

 

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