恵比寿のウェスティン・ホテル東京の中華料理「龍天門」で開催された、オーストリアのフランツ・レートのワインメーカーズ・ディナーに行ってきました。
このワイナリーはウィーンの東に50キロ離れたヴァーグラム地方を代表するワイナリーの一つだそうです。
ウェルカム・スパークリングとして出されたのがピノ・ワール・ブリユット・ゼクト2010。瓶内2次発酵によって造られるブラン・ド・ノワールです。フレッシュで果実味が豊か、コクのある辛口のスパークリングはやわらかな味わいです。
料理は昨年就任した鄧 徳勝 (とう とくかつ)料理長のプロデュースする特別メニュー。前菜は海の幸、山の幸入り前菜の盛り合わせ。チャーシューは香港料理らしく蜂蜜の甘さが効いているが、肉の繊維が少し硬い。帆立のカルパッチョはさっと湯引きして、ニンニクと醤油のタレで。揚げニンニクがトッピングされていて、ワインに良く合います。四川料理のよだれ鶏は辛さが控えめで、刻んだピーナッツとあわせてエレガントな料理になっています。フォワグラと青梅。串に刺したフォワグラと甘く煮込んだ梅の組み合わせは、甘くフルーティーな青梅とふんわり濃厚なフォワグラの組み合わせがおもしろい。いずれもワインを意識した、従来の中華料理の枠にとらわれない前菜です。
2番目のワインは白ワイン。ローター・フェルトリーナ・シャイベン2011。オーストリアでも希少な土着品種。熟すと果皮がピンク色になるそうです。熟したリンゴやトロピカルフルーツの香りがあるが、きれいな柔らかい酸味、フレッシュで清涼感のある味わいで、ほんのり甘く白コショウのようなスパイシーさがある。樹齢50年以上の古木、サハラ砂漠から飛ばされてきた砂が堆積したレス土壌、深い根が複雑でスパイシーなワインを生み出しています。
次の料理は海老、蟹、帆立のホウレン草スープ。ホウレン草が細かく刻まれているが、粉状ではないためザラつき感がなく、とろみをつけているため透明感とまろやかさがあります。青臭さはなく、薄めのエレガントな味。帆立は半生のため、海老、蟹とともに繊細な味わいです。スープではあるが、ソフトでエレガントな海鮮が、やわらかな酒質のローター・フェルトリーナに良く合います。
次の白ワインが250種類のブドウからつくるゲミシュター・サッツのSimply WOW。レート家のこの畑には、様々な種類の希少種、絶滅危惧種、一部30種の黒ブドウも含めて、世界各地のブドウ品種のコレクションが「ブドウ品種ミュージアム」として移植されています。ワイナリーの50周年を記念して、この畑のブドウを一斉に収穫、圧搾・発酵してつくられた、混植・混醸のワインがSimply WOWです。口の中で舌の様々な位置が味わいに反応し、複雑性、多様性、垂直性があって余韻が長いこのワインは、様々な食材やスパイスを使用した中華料理に最高に合います。
料理はとうがんと豚バラ角煮 人参と青菜添え。八角の良く効いた甘くスパイシーなタレでとろけるように柔らかく煮込んだ豚肉。これも味は薄めでややシンプル、ソフトでエレガントなふんわりした味わいです。全く尖ったところのない丸い料理に、ゲミシュター・サッツの丸い味わいが良く合います。
ピノ・ノワール レセルヴ2011。18か月古樽で熟成させたピノ・ノワール。ベリーなどの赤系果実のエレガントな香り、ほんのり甘く、やわらかい酸味果実味が感じられます。
料理はソフトシェルクラブのピリ辛ソースかけ&ココナッツ炒飯。トウガラシがしっかりと使われているが、ソフトシェルクラブ自体はシェルだけでなく蟹肉もジューシーで甘さがかなりあり、カシューナッツやヤングコーンなどの香り豊かな食材ととともに、エスニックな雰囲気の料理です。甘いココナッツの香り豊かなサクサクした風味のチャーハンもパイナップルなどが入っていて、味付けはかなり控えめで、さらにトロピカルな味わいが加わります。
赤ワインのブラウアー・ツヴァイゲルト レゼルヴ2011は柔らかく優しいテクスチャーで、優しくまろやかな酸味ときめ細かくビロードタッチのタンニンが魅力的なワインです。
牛肉の黒豆醤炒め。牛肉は繊維がしっかりしていて、肉質がやや硬いが、しょっぱくなく甘くエレガントな味付けで、この赤ワインには良く合います。
デザートのマンゴープリン&エッグタルトも甘さが控えめで、上品な味でした。
この日の龍天門の料理は広東料理らしい優しくエレガントな味わいで、現代的なセンスも感じられました。ワインとの相性が配慮されていて、それぞれのオーストリアワインとのペアリングが楽しめ、充実した素晴らしいディナーでした。