六本木の交差点に近いレストラン。一昨年オープンして話題になり、昨年ミシュラン2つ星に昇格したレストラン。ビルの地下1階だが、竹の植え込みが望める中庭に面して明るく、シックなダークブラウンのインテリアの落ち着いたダイニングルームである。シートはゆったりしていて座り心地が良い。 アペリティフの飲み物はシャンパーニュをグラスで。NVポル・ロジェ・ブリュット・レゼルヴ、ブドウ3品種のバランスがよく、味も濃厚でエレガント、大手メゾンのスタンダードのなかで最もレベルが高いだろう。 アミューズその1はカリカリのクレープに包んだ新玉ねぎのムース。細かく刻んだハムがトッピングされている。コーンに熱々で入っていて、甘く香ばしい。シャンパーニュに大変良く合う。 アミューズその2はジャガイモのスープ。裏ごしていてクリーミーなスープだが、ちょっとしょっぱく感じられた。この日のメニューの中では普通の料理。自家製パンは全粒粉の小麦粉なのだろうか。外はパリッとして香ばしく、中はふんわり柔らかいが味がある。バターは無塩バター。相方の前菜は富山産ホタルイカのコンフィーを白アスパラガスと共に チョリソソースで
ホワイトアスパラが主役で、ホタルイカのソースがかかっているというのが実際の料理。ホタルイカは新鮮で臭みが全くないうえに、塩辛のように塩の少し効いたイカの内臓の旨味が濃厚で、チョリソ、ケーパー、トマトなど凝縮性の高い素材と共に、スパイシーで味わいがパワフルなソースとなっていて、ソフトで淡白な素材であるホワイトアスパラと補完しあってバランスの取れた一皿となっている。シェフの料理センスが感じられる一品である。 ワインはソムリエの勧めで、コルスのドメーヌ・ルヌッチ 2011、セパージュはイタリア系品種のヴェルメンティーノ。熟したリンゴや洋ナシ、ハーブ。フレッシュだが、個性ある香りの果実味あるワインがスパイシーな料理によく合う。
前菜の鴨とフォワグラのソーシソン仕立て コリアンダーの香るニンジンのサラダを添えて
鴨とフォワグラに豚肉、ピスタチオを加えてソーセージに仕立てたシャルキュトリー系の料理。それぞれの素材が補完しあっている、フォワグラや豚の脂が程よいバランスで、しこしことした肉の食感とともに、シャルキュトリー系の料理にありがちな緩さや退屈さを払拭して、緊張感や凝縮感のある料理に仕上げている。ニンジンは細麺の平打ちのパスタのような形状に細長く仕上げて、コアンダーの香りがエスニックである。 ソムリエの勧めで、ジュランソン・セック2007(クロ・ラペール)をグラスで合わせる。ふくよかなワインで、甘いジュランソンは、フォワグラのソテーの定番ワインだが、セックも厚みがあり、肉とフォワグラの両方に合う。
長崎産活〆平スズキのポワレ、自然薯と新玉葱のソテーを添えて
肉汁のソース、菜の花と小玉ねぎを添えてあった。ネット上はホウボウであったがこの日の仕入れは平スズキ。甘い野菜と肉厚で柔らかなスズキのいずれも新鮮である。豚肉の肉汁のソースと甘味のある自然薯、焦げ目の入った小さい玉葱や苦みのある菜花が単調になりがちな淡白な素材にアクセントをつけている。 ワインはボルドー、ペサック・レオニャンのラベイユ・ド・フューザル・ブラン2010。ソーヴィニオン・ブラン主体、セミョンなどがブレンドされている。シャト・ド・フューザルのセカンド。良い意味でピピ・ド・シャをかなり感じ、ちょっとふくよかだが、酸味もかなりあるバランスの良いワイン。魚はもちろんだが、付け合わせの野菜にも合う。
イベリコ豚頬肉のブレゼ なめらかなポレンタと産直野菜のソテーを添えて
イベリコ豚の頬肉を白ワインで煮込んでいるため、味わいが濃くなりすぎずに、エレガントな味わいがとどまっている。イベリコ豚は、全体は柔らかく煮込まれているが、個々の繊維は意外に太く食感がしっかりしていてがっちり硬質な味わい。トウモロコシの香り豊かなポレンタソフトで甘く対照的である。野菜は三浦半島産の根菜が中心で、カブや大根はソテーされることにより新鮮な甘さが凝縮されている。 ワインはソムリエの勧めで、ローヌのヴァケイラス2010(クロ・デ・カゾー)の赤。グルナッシュ主体にシラーが加わる。ふくよかで甘さと酸味のバランスがとれていて、豚の煮込みに良く合う。プレタノマイセス香もなく、ピュアでエレガント、ちょっとスパイシーな味わいである。
フランボワーズの香るリュバーブのクラフティー 発酵ミルクのグラスを添えて
表面のディスクがさくっとしていて、その下は酸味が柔らかく広がるエレガントなお菓子。アイスクリームは濃厚な味わいで、バランスが良い。
ヘーゼルナッツのプラリネとショコラのガトー モカのグラスとのアンサンブル
濃厚で香り豊かなチョコレートソースとソフトでクリーミーなチョコレートムースの下に香ばしくキャラメリゼされた、ヘーゼルナッツが敷かれ3層の凝縮感のあるデザートに仕上げられている。モカのアイスクリームはコーヒーの香りが強烈でミルクの香りとともにこれほどアロマチックなアイスクリームはない。
サービスのレベルは最高の水準で、トイレで席を外すと、毎回、席を引いて着席させてくれるなど、かなりきめ細かい。満席で料理の待ち時間はあったものの、2時間を超えたが決して長くは感じられずに時間が過ぎていった。帰り際には、シェフと支配人が階段を登って道路に出るまで、ずっとエントランスで見送ってくれたのが印象的であった。
A+