日比谷線の広尾駅と恵比寿駅の中間あたり、明治通りに面している店は、看板はなく、入り口がわかりにくいうえに、ナンバー錠が差し込まれたドアを開けると段差があるなど、どこか隠れ家的雰囲気が漂う店です。
カジュアルなインテリアで、隣の席も近く、決してゆったりと快適ではないのですが、ほとんど満席で賑わっています。
土日・祝日は一品料理のセットランチはなく、ウィークエンドランチセットとウィークエンド限定ランチコースのみのため、ランチコースをオーダーしました。
セットドリンクが一杯付きます。スパークリンワイン、赤白ワインなど。白ワインを注文、説明はなかったですが、シャルドネのようです。
自家製漬け物が最初に出されます。大根の醤油漬けですが、五香粉の香りに旨味がたっぷり。ワインのつまみとしても結構いけます。 
最初の皿はJASMINE名物”よだれ鶏”入り前菜3種のプレート。よだれ鶏は小さな器に入っています。柔らくジューシーな鶏肉が、胡麻や唐辛子など香辛料の効いた甘辛の複雑な味わいのたれに漬け込まれています。茄子も入っていてこちらもたれが良くしみ込んでジューシーに味が広がります。辛さは中程度であるため、旨味が感じられます。
いろどり野菜のあえ物。もやしなどの繊細な野菜の和え物で味付けはサラダのようにさっぱりしています。花咲クラゲの黒酢風味は、肉厚のコリコリとした食感のクラゲが、ほんのり黒酢の香りがするタレに良く馴染んでいます。
自家製点心2種盛り合わせ。春巻と餃子。サクサクの皮にねっとりした餡の春巻。餃子の餡にはザーサイのような発酵食品のニュアンスがあります。残ったよだれ鶏のたれをつけていただくとのことでしたが、酢と醤油も用意してくれました。春巻には甘辛く複雑な味わいのよだれ鶏のソースが良く合います。
主菜は国産黒豚と根菜の黒酢酢豚。とろりとしたやや甘い黒酢のソースかかった素揚げした豚肉、レンコン、山芋。バターを絡ませたマッシュポテトが添えられているのがユニークです。薩摩芋チップのトッピング。旨味が十分に抽出された黒酢ソースは、素材の味わいを封じ込めるように素揚げされたそれぞれの食材によく絡み、ドゥミグラソースのビーフシチューのようなイメージの料理となっています。
グラスの赤ワインはスパイシーな味わいで、この黒酢や次の麻婆豆腐に良く合います。
麻婆豆腐丼。ひき肉の量が多く、しっかりとした甘辛の味付けは他の料理とも共通しています。花椒もかなり効いていて、深く香りと痺れ感があります。リッチでパワフルな味わいの麻婆豆腐ですが、辛さは中辛程度に抑えられ、甘さもかなり感じられ旨味もあります。
鶏白湯麺は鶏の旨味がコラーゲンと共に抽出されて味わいは凝縮感がある。それでいて、油は少なく、スープは飽きることのない美味しさです。麺はスムースですが弾力性ともちもち感があり、中華料理店のものとしてはレベルが高いです。
デザートは定番の杏仁豆腐。アーモンドが一粒トッピングされています。アーモンドエッセンスの香りで、杏子の核よりもふくよかな香り。きめ細かいテクスチュアですが、崩れるような柔らかさはなく、質感は比較的しっかりしています。乳製品の感じはありません。
香辛料も多用され、味わいは全般に濃厚でパワフルな料理ですが、一方で、乾物や発酵食品により味わいや旨味が抽出されるなど、料理人の様々な創作意欲が感じられる料理でした。
