長野南部の人口約1000人の根羽村では、住民の手による地域の木材資源を利用した再生可能エネルギーの自給事業を中心に、地域再生プロジェクトが進みつつあります。このプロジェクトには、私が役員をしている地域総合整備財団(ふるさと財団)の新・地域再生マネージャー事業が活用されており、今回、現地に入ってプロジェクトの進捗状況を調査するとともに、意見交換を行ってきました。
地域で使うエネルギーを地域で生み出すということは、よその化石燃料によるエネルギーを買わなくてすみ、地域にエネルギーのコストが還元されます。また、間伐が行われることにより、森林が保護され、今後良質な木材が生産されるとともに、水源地としての水源の涵養にも役に立ちます。
山の村有林で住民が伐採した間伐材は、ボイラーで使われる80センチから90センチのサイズにカットされ、軽トラックで木の駅ねばりんに運ばれて、積まれていきます。自己申告で届けると、1立米あたり4500円の地域通貨券「ねばね森券」を受け取ることができます。この地域通貨は村内の商店22店舗で使うことができ、地域の商店が潤うという仕組みです。従来放置された間伐材も価値のある物として地域還元される仕組みで、間伐の促進により森林の保護育成につながります。
木の駅
丸太は薪に割られてしっかりと乾燥させたのちに、現在建設されている特別養護老人ホームの薪ボイラーで使われます。高齢者の使うお風呂や居室の暖房などです。乾燥させるには時間がかかるので、すでに建設段階から薪の準備がされているのです。
建設中の特別養護老人ホームです。建物には根羽村で産出されるスギやヒノキが使われています。
「木の駅ねばりん実行委員会」委員長で、根羽村林業研究会の会長である石原明さんのお店「藤久酒店」。お店が地域通貨券の発券などの事務局機能を担っています。
この酒店、扱っている商品は、ほとんど長野県産のワインと清酒で、地産地消が徹底しています。
もちろん、地域通貨券「ねばね森券」を利用できます。この日はテレビ局の取材が入っていました。
根羽村の交流拠点「ネバーランド」。レストラン、故郷自慢市場、多目的ホール、宿泊施設を備えた複合施設です。
根羽では矢作川の源流で育てた野菜をおすそわけする「菜の駅」プロジェクトも進行しつつあります。みんなで考えた独自のデザインのダンボールに箱詰めされて出荷される日も近いでしょう。ドイツのレッテンバッハ村のフィッシャー村長の講演会では村内外の350人が参加し、自分たちで作る自治の重要性に目覚めました。この日はレッテンバッハ村との今後の交流について、根羽村役場で議論しました。新地域再生マネージャー事業2年目を迎え、根羽村は明らかに変わりつつあります。今後の小さな村再生の新しいモデルとなることを期待したい思います。