西武池袋線沿線の練馬区大泉学園を歩きました。かつて30年以上前清瀬市に住んでいた頃は、毎日通勤通学で利用していた西武池袋線。大泉学園駅も毎日通っていましたが、下車して街を歩いた記憶はありません。
北口の駅前はペデストリアンデッキでつながっていて、平成13年に完成したゆめりあホールのあるゆめりあ1などのビルが結ばれていますが、このビルはもともとあった小さな街区をそのままに再開発ビルにしたためか、ビルの敷地が三角形で、中途半端な規模です。周辺の虫食い的な再開発は、区画整理までは実現できなかった都市計画のむずかしさが感じられます。このあたり、かえって以前の賑わいはなくなってしまっているのではないでしょうか。
一方、北口東側の大泉学園駅北口地区第一種市街地再開発事業は昨年完成したばかりで、高層マンションのプラウドタワー大泉学園がそびえたっています。
西武池袋線大泉駅の乗車人員は1970年代以降半世紀にわたり、ほぼ4万人前後で推移しています。成熟した街であることがうかがわれます。
今回は大泉学園駅近郊の住宅と農地が混在するエリアを歩きました。まず食事は手打ちうどんの長谷川へ。ミシュラン2015、2016連続掲載のうどん店です。このあたりは蕎麦が強いエリアですが、このうどん店は食べログで西武線沿線のうどん部門で1位、東京のうどん部門で3位の高得点を獲得しています。2時近いですが、まだ行列ができています。
一番人気は糧うどんという牛肉と野菜の入った温かいつけ汁につけて食べるうどん。麺は温かい釜揚げと冷たいものがあります。冷たい麺を温かいつゆにつけるのが武蔵野うどんの定番だそうですが、今回は季節柄温かい麺の釜揚げにしました。
うどんは注文を受けてから茹でるので、11分以上かかります。メニューにはうどん店には珍しい一品料理が数多くあり、待ち時間におかずを頼んでお酒を飲むのが通の頼み方なのか、結構やっている人がいます。小さいサイズも可能。チャーシューが人気のようです。うどんにもトッピングしてもいいのでは。
釜揚げはつけ汁がしだいに薄くなるのが難点ですが、関東風の甘く濃厚なつけ汁のため、ちょうど最後にほどよいになって、麺も熱々のため、汁の熱さが持続されてなかなか良かったです。
うどんは香川産の小麦と新座産の小麦をブレンド。ほどよいコシと弾力があり、やや太めですが、テクスチュアがきめ細かくスムースなのど越しです。
長谷川を出てすぐ近くの北野神社へ。七五三の着飾った子供たちと親御さんでにぎわっています。境内はちょっと狭いですが地域の人々に親しまれている神社なのでしょう。
北に向かい白子川にかかる橋を渡って右折すると、23区内で唯一の牧場である「小泉牧場」があります。乳牛と黒牛がいました。かなり動物特有の臭いがしますが、周辺の住宅とコミュニティが共存しているようです。通りの向かいの売店ではできたてのアイスクリームを売っています。350円と標準的な価格ですが、かなり売れています。
もう少し行くと東京初のワイナリーの「東京ワイナリー」があります。
通りに面したショップでは試飲もできます。新酒の山形県置賜デラウェア、山形県置賜デラウェア(醸し)、長野県朝日村ナイアガラにごりスパークリングを試飲しました。香り豊かで味わいもしっかりとしています。
ナイアガラとデラウェアは甘くフレッシュな香りと酸味のチャーミングなワインです。
デラウェア(醸し)はブドウの皮まで漬け込んだ赤ワインと同じ作り方をする白ワイン、いわゆるオレンジワインです。コクがありながら、爽やかな酸味とえぐみのない果実味のきれいな味わいで、果皮からと思われるコクのある旨味が抽出されています。日本料理を始め、幅広い料理に食中酒として合いそうです。新酒でこれだけ、味わいの深い質の高いワインは、日本ワインでは珍しいです。ぶどうは山形県の置賜産とのこと、デラウェアの主力産地だけあって、ぶどうの質も高いです。
昨年のワインは全部売り切れとのこと。今年の赤ワインは現在仕込みの真っ最中といったところでしょうか。かなりにぎわっているので、今年のワインもすぐに売り切れるでしょう。
ブドウは全国各地から購入しているようですが、一番近い畑は歩いて10分程度のところということで、行ってみました。スーパーのライフ西大泉店の斜め向かいです。西大泉2丁目の田中さんの農園です。
「高尾」という生食用の品種です。巨峰の実生から選抜育成された品種とのことで、ジベレリン処理して種なしになっているとのこと。ワイン用にはジベレリン処理せず、小粒の方が良いと思われますが、生食用のぶどうを購入してワインを造っているようです。
この季節ですので、ぶどうは収穫がすべて終わっていて、葉もわずかに残っていました。農園の前の通りに面した直売所では、練馬名物の大根、赤大根、カブ、ブロッコリー、キャベツなどがありました。赤大根とブロッコリーを買ったらおまけに赤ピーマンをいただきました。ライフで野菜を購入する必要はありません。
さらに進んで四面塔稲荷前の交差点を左折すると、芝畑が広がるエリアがあります。広いです。芝畑の先に農家の屋敷森が見える田園風景、生産緑地に指定されています。練馬区にこのように広大な芝畑なあるとは驚きです。芝は儲かるのでしょうか。
進む方向を南に変えて保谷駅方向に歩いていきます。ブロッコリーやキャベツなどの畑も見られるようになります。小さなビニール内の小松菜やホウレン草、ブロッコリー、トマトなど様々な種類の野菜が混じった畑は農業体験農園「どろんこ わぁるど」です。市民に貸し出す市民農園とは異なり、農家が開設し、耕作の主導権を持って経営・管理している農園です。
利用者は、入園料・野菜収穫物代金を支払い、農家や菜園アドバイザーの指導のもとに、種まきや苗の植付けから収穫までを体験します。「自由に好きなものが作れる訳ではありませんが、八百屋の店頭に並ぶものに負けない野菜を年間20種類以上も収穫することができる」とのこと。農家と市民との交流や食育の推進など、都市型農業の持続存続だけでなく環境と調和した新たな農業の役割が期待されます。地方都市の農業振興策としても推進する価値のある施策ではないでしょうか。
もう少し行くとマルエツが見えてきて、あとわずかで保谷駅です。駅北口の練馬区側は西東京市の南口に比べるとかなり寂しい街並みで、東京23区の外縁と20万都市の玄関口の違いを感じます。
永田町から大泉学園は35分程度。都心から近い23区内にこのように広大な農地があることは驚きです。サラリーマンも休日には農作業が楽しめます。農家の直売所では採れたての新鮮な野菜が手に入ります。練馬区は田園の魅力と都市の利便性を兼ね備えた都内でも魅力的なエリアです。